一志の山歩き ~ 矢頭山
2014/12/21

近鉄電車で名古屋方面に向かうとき、新青山トンネルを抜けると進行方向右手にギザギザの稜線が見えてくる。ちょっと気になる山だ。たぶんそれが矢頭山(やずさん)、県別に出ている山と渓谷社のガイドブックを繰ると2時間あまりで往復できると書いてある。先日のハイキングから右膝の調子がいまいちだが、その程度の行程なら問題なかろう、仕事に出かけるカミサンを車で送り、その足で名阪国道を東に向かう。迎えの時間までには充分に往復できると踏んだ。

上野東インターを下りて南へ、国道165号線で青山高原を越える。近鉄奈良駅前から2時間ほどで登山口に到着。ここは矢頭中宮キャンプ場、その真ん中に八頭の大杉が屹立している。駐車場も大杉の前だ。雨が多いと木も育つ、樹高42.5m、周囲9.56m、樹齢は約1000年ということだ。

矢頭山はいくつかのピークが連なり、それが鋸状の遠望となっている。案内図に御峰とあるのは、25000分の1の地図上では730.6mの三角点にあたる。国土地理院の山名表記は東側のピークにあるが、これは誤りだ。もっとも登ってみて初めてそれが判る。

すぐに山道に入り、三段に落ちる不動の滝に出会う。滝壺の脇の岩には磨崖仏が刻まれている。古くからの信仰の山ということだろう。沢筋から見上げる先のピークがたぶん矢頭山、遠くから眺める特異な山容も登っていると判らない。沢筋を離れ、急な尾根をどんどん登る。ずいぶんとロープが張られている。頂上に辿り着いてやっと眺望が得られる。東側の伊勢平野、湾を挟んで知多半島まで視界に入る。西側は台高山脈、目立った鋭峰は局ヶ岳だろう。地元一志町の波瀬小学校の卒業登山が毎年行われているんだろう、3月上旬の日付が示された小さな看板が並んでいる。この山ならその時期だと雪はないはず。さして広くない山頂が子供たちで満杯になるのか、それとも山の小学校だから大した児童数ではないのかも。間違いなく急斜面の上下で擦り傷の子供が出るだろうし、都会の小学校なら保護者からクレームが付きそうな学校行事かも。

下りは、道標によれば仁王峠、国土地理院の表記だと矢頭峠へ。どうもこれが登拝順路になっているようだ。駐車場に先客の車が1台駐まっていたが、行程中に出会わないのはそのせい。キャンプ場に戻ったら他車は3台に増えていたから、私のあとに登っている人たちが何人かいるということだ。まだ時刻は午後2時、これから登ったって大丈夫なぐらい。膝のほうもこの程度なら何ともない。

帰りは国道368号線、369号線の伊勢本街道ルートをとる。途中の寄り道は美杉町上多気の北畠神社、南朝の廷臣であった北畠氏を祀っている。立派な庭園が神社脇にある。賀名生の皇居をはじめ紀伊半島には南朝ゆかりの地がたくさんある。もうすぐ81歳の今上天皇は北朝の系譜だからか、あまりこちら方面への御幸というのは聞かないが、皇太子は山好きで、大峰登山の折には南朝の拠点でもあった天川村にも訪れている。まあ、いまどき南北朝正閏問題など知らぬ人が大多数だ。

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