度会の山歩き ~ 獅子ヶ岳
2015/1/4

例によってお正月は食べて飲んで運動不足と相場が決まっている上に、今回は曜日の巡り合わせで9連休、おまけに休み明けは6日連続勤務なので大変だ。鈍った体を起こさねばと軽い山歩きと思ったものの元日の雪。奈良市内は翌日には消えたが、山間部となるとちと心配。まあ正月4日ともなれば国道沿いは除雪がほぼ完了しているだろうし、今回目指すのは引き続き南の山、志摩半島の付け根の獅子ヶ岳だ。ただ心配なのは奈良・三重の県境越え。

ルートは三つ、名阪国道・伊勢自動車道、国道369号・368号(伊勢本街道)、国道166号(伊勢街道・和歌山街道)が候補となる。名阪国道は自動車専用道なので雪は残っていないが、何とも遠回りだ。国道369号は奈良県内は問題ないが、三重県に入り368号となった仁柿峠あたりは狭隘・急坂の酷道なので危険極まりない。すると南ルート国道166号の高見越えとなる。ここの問題は高見トンネル前後の積雪状況、冬用タイヤもチェーンもない自分としては、前日から国道ライブカメラを睨み、危なそうだったら退却の腹づもりで車を出す。

名阪国道針インターを下りたら道路こそ雪は残っていないものの標高500mの大和高原は雪景色、国道を走る限りは何とかなると、榛原、菟田野、鷲家と進む。車の通行量がそれなりにあるのでタイヤ接地面に雪はないが、部分的には轍状態、カーブの吹き溜まりでは腹を擦りそうなところがある。恐る恐るの安全運転で何とかトンネル西側まで上り詰める。三重県側に出たところは長いループ橋になっているので、そこがどんな状態か気になるところ。出口手前で減速、フロントガラスから覗くと件の橋では除雪車が作業中。ほぼ除雪は完了している模様でひと安心。ここさえ抜ければ問題ない。戻りが遅くなれば名阪国道ルートにすればいいから、退路は確保できる。

なんだか山登りよりも国道アドベンチャーみたいだが、ドライブも楽しみのうち、帰省リターンのラッシュとは無縁の快走ルートだ。度会町の注連指という集落の奥が獅子ヶ岳の登山口となる。登り90分、下り73分とある。この半端なコースタイムが可笑しい。黄色い看板はこの後も随所に現れ、その案内が実に適切、迷いやすい箇所、注意を要する箇所、ツボを押さえた設置には地元の誠意が感じられる。林道の終点が水道取水地になっており、そこから沢筋を辿る。やはり南だ、雪は全くない。いくつかの堰堤の脇を抜け、尾根道になる。かなり急な箇所もあるが快調に歩を進める。息が上がらないように休みなく。駐めた車も一台きりだったし、誰に出会うこともないだろう。頂上近くになってようやく正月の雪の溶け残りが現れた。

主稜線に出たところに妙な山名標があった。「剣尾山785m」、何だこりゃ。「なまくら歩こう会」なる団体名も記されている。この先ひと登りする獅子ヶ岳が733m、それより高いはずもないし、そんな名前は地図にも表記がない。家に戻って考えてみると、どうもあれは能勢の剣尾山だろう。標高もピタリと合致する。何故、大阪府北部の山名標がこんなところにあるのか、悪戯にしては念が入っている。実害はないとはいえ、馬鹿なことをする輩がいるものだ。剣尾山あたりだと登山者も多くて、私製の山名標が乱立しているはずだ。山頂美化のために除去する(私もときどき実践する)ならともかく、それをはるばる志摩半島まで運ぶご丁寧さは理解できない。まさか、この「なまくら歩こう会」のメンバーの仕業でもないだろう。たぶん会員は中高年の方々だろうが、こんなところで恥を晒すとは思ってもいなかったろう。私製山名標をやたら山頂の樹木に巻き付ける行為は観光地の落書きと大差ない。ただの自己満足、自己顕示欲だけのもの、黄色い道標の志とは比ぶべくもない。この記事を見て獅子ヶ岳に登られる方がおられたら、是非撤去していただきたいものだ。

妙な山名標はともかく、すぐに視界が開けて獅子岩に到達する。おっとびっくり、先客が一人。
「どちらから」、「注連指からです」
「だいぶかかったでしょう」、「ちょうど1時間ぐらいですかね」
「ずいぶん速いですね」、「休まずに来ましたから」

この人はどこから登ったんだろう。南側の小萩というところからだと、林道がかなり上まで来ていて歩きは40分ぐらいらしいから、そちらかも知れない。この人と別れ、獅子岩から山頂までは5分もかからない。

山頂も展望が得られるが、獅子岩のほうがより広闊という感じだ。先日登った矢頭山と基本的に同じ眺めになるが、こちらのほうが少し南寄りなので、英虞湾、五ヶ所湾というこれぞリアス式海岸という入江が望める。蛇行する大河と見まごうばかりだ。登り始めたのが正午前だったので、山頂は午後の日差しが暖かい。このペースなら、15時前には下山、往路を戻っても日暮れまでには山間部を通過できるだろう。路面に残った雪もあらかた溶けているはずだ。途中の休憩はとらず大宇陀の道の駅までノンストップ、午前中の状態が判っているので安心だ。要注意区間が終わってゆっくり休憩となる。「冬至十日はアホでも分かる」の言葉どおり、既に旬日も過ぎたのだから日没が遅くなったのは明瞭、でもこれは今の若い世代には通じない言い方だろうなあ。

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