多度、上げ馬の里を歩く
2015/1/25

冬場の恒例、近鉄の「酒蔵みてある記」、毎年ほぼ同じ酒蔵がラインアップされるので、付随するハイキングも行き尽くした感がある。どれだけ酒飲みかと言われそう。それで、いきおい遠方まで足を伸ばすことになる。今回は名古屋エリア、桑名で近鉄から養老鉄道に乗り換える。伊賀鉄道と同じように不採算路線で経営を分離、近鉄は第三種鉄道事業者の位置づけになっている。第一種鉄道事業者で近鉄養老線のままだったら株主優待乗車証で行けたのにと残念なところだ。

養老鉄道は木曽三川から少し離れた養老山地東麓を走る路線だ。自転車も載せられるワンマン運転の電車で多度駅に到着、桑名からは10分あまり、四つ目の駅なのに310円とは割高な感じ。

多度駅から北に望む多度山が養老山地の南端にあたる。設定されたハイキングコースは川沿いに西に進み多度大社を目指す。途中、鯉料理の大黒屋という店の前を通る。こんなところにと言っては失礼なのだが、門から覗く立派な庭の奥に座敷があるのだろうか、まさに老舗料亭という佇まい。川魚というのはあまり食指が動かないけど、こういう店だと先入観を打ち砕く逸品が出てきそうだ。名古屋に来る機会は多いから、ひつまぶしもいいけど、次はここでゆっくり食事というのも悪くない。

大黒屋の隣が桔梗屋、どちらも博物館ものの古い建造物だ。この一角だけ歴史的景観という趣き、桔梗屋は多度豆という銘菓で有名らしい、大黒屋と同様、中京圏の人には知られた店なのかも。

こんな店が並ぶというのは門前町としての歴史があるからなのだろう。多度大社はもうすぐだ。短い参道の奥に本宮と別宮が対峙している。奈良に住んでいると春日大社や大神神社などのイメージが浮かんでしまうので、ずいぶんこぢんまりしたお宮さんという印象だ。多度大社には東側からの参道で到達したので、これは表参道ではなかったようだ。大鳥居と門前の広場に石段が備わっているのは南側だった。裏から入って表に抜けるルートで酒蔵を目指す。丘陵を切り崩した採石場の脇を抜け、田園地帯を行く。雪を纏っている遠景はたぶん伊吹山だろう。

さて、お目当ての細川酒蔵に到着。多度駅のスタート時間帯の最後に歩き出した私はほぼ最終ランナー、酒蔵の中庭ではビール箱に座って先客たちが酒盛りしているぞ。薦被りが二つ、ほとんど空になっていて、追加分を水差しで補給中。試飲カップが並び、ご自由にという趣き。おっ、これはなかなか好感が持てる、試飲は一杯のみなんてけちくさいことはないみたい。みたらし団子などの出店もあるぞ。これでなくっちゃ、はるばる来た甲斐がない。そして、抽選会。細川酒蔵の銘柄である「上げ馬」の一合瓶、四合瓶、一升瓶、さらには地ビールもやっているらしく詰め合わせも。当り籤はふんだんにあるのに、私はこういう時に当たった試しがない。仕方なく、酒蔵直販を一本リッュクに詰め込む。ちなみに、「上げ馬」とは多度大社で行われる上げ馬神事に由来するとのこと。

5、6杯はいただいただろうか。ハイキングの後でほろ酔い気分、帰路は同じ道を引き返す人も多いが、酒蔵の近くから出る三重交通の臨時バスで戻るとする。六角地蔵という変わった地蔵さんが祀られている。これはなかなか珍しい。お堂も六角、仏像も六角、お堂の前には子ども相撲大会でもやるのだろう、土俵もあるのが面白い。

往きは時間の関係で近鉄特急を利用したが、帰りは節約して急行の乗り継ぎ、ちょうどよい接続で思いのほか早い時間に帰宅。電車の中では予想どおりの居眠り連発となった。

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