激安で鹿児島に行く
2015/4/21-22

「かあちゃん、どこでも片道2000円やて。こら行かなソンやで」とは、ピーチの記念セールのメールを見て思わず発した言葉。何の3周年だか忘れたが、ともかく発売開始の3月1日午前0時にPCに齧りつく。テレビで観た高千穂に行ってみたいとカミサンが言っていたから行先は鹿児島にした。宮崎にはまだ就航していないし。

ネットは途中で何度も中断するわ、挙げ句の果てはダブルブッキングになるわ(この取消が大変、ピーチは実質的に電話問合わせの窓口を閉ざしている)。何だかんだがあったものの鹿児島往復が二人で一万円以下という信じられない値段で予約ができ、出発の日を迎えることとなる。

早朝の関西空港第2ターミナルには、ずらりと赤紫のA320が並ぶ。午前7時過ぎはピーチの出発ラッシュなのだ。札幌に、福岡に、仙台に、成田に、そして鹿児島に。きっと相当数の客は2000円組ではないかな。搭乗の誘導も少人数のスタッフが手慣れたものだし、お客もリピーターが多いし、VIP待ちなどあろうはずもなく定刻離陸となる。鹿児島空港では免責込み一日3000円という格安レンタカーが待っている。それが何と帯広ナンバー、そっちの会社が鹿児島進出して運んだ車だとか。安全に飛んで走れば文句はない。

高千穂の話は一泊旅行の前にどこかに消え、鹿児島だったらどこに行くかという話になる。指宿温泉の砂むし、鹿児島市内の島津屋敷(仙巌園)、城山公園などは定番として巡るとして、残りの時間をどこで過ごすか。そんなことは気の向くままに現地で考えればいいや。

指宿温泉の砂むしでさっぱりした後、鹿児島の宿に戻る途中のこと。「時間によると繋がって渡れる島があるらしよ」と、カミサンが言う。そこで、ちょっと寄り道したのが知林ヶ島、温泉から少し北になる。広い公園の先に見えるのがその島か。海岸に近づくと、おおっ、繋がっている、歩いている人の姿も見える。

この砂州は潮の干満や流れの関係で一日中繋がってはいないし、全く現れない季節もあるらしい。たまたまタイミングよく来合わせたということだ。桜島の降灰なのか、煙ってはいるけど天気は悪くない。気温も上がり少し暑いぐらい、上着を車に置いて歩き出す。島まで800m、足許が砂のことだから靴が沈み思ったより時間がかかる。砂州の島側に売店があるように見えていたのは案内の看板、ボランティアのガイドのおじさんがいて、我々が遠来とみるや島の概要を一通り説明してくれる。渡島証明書を発行してもらうと100円。九州の人はどこでも人なつっこい。

島からは来た道を戻る。渡島証明書が出せるのは歩く以外に交通手段がないからだ。17:40までには戻るようにと書かれていたのは、遅くなると砂州が消えるということのよう。軽石を拾ったりして遊びながら引き返していると、空から爆音が降ってくる。見上げると三機編隊のプロペラ機、自衛隊か米軍の輸送機のようだ。錦江湾上空で旋回しているのか、何度も上空に姿を見せる。きっと訓練飛行だろう。鹿屋航空基地のホームページを見ると、酷似した輸送機の画像がいきなり出てくるので、きっとこれだろうと納得。なにせ空港のない県民なので、日常生活では低空を飛ぶ飛行機は見慣れないのだ。

さて翌日、仙巌園でゆっくり過ごしても夕方の飛行機まで時間がある。カミサンが石橋記念公園に行ってみたいと言う。何かブリジストンと関係でもあるのかと思ったら、これは本当の石橋、市内に架かっていた歴史的建造物を復元移築したものらしい。公園内には三つの石橋が配されている。そのうち西田橋が一番立派な造りで、参勤交代の際には藩主も渡ったとのこと。もともとは城に近い場所にあったようだ。橋の下を流れる川は本物ではないにせよ、桜島を借景に絵になる構図であることは確か。折しも橋の上では新郎新婦の記念撮影が行われている。もちろん和装だ。

西田橋の袂には石橋記念館がある。入場無料、移築復元に至るまでの経緯や石橋造りの工法など、なかなか興味ぶかい。全国の名高い石橋のパネル展示もあり、眺めていると地元関西のものもある。京都南禅寺界隈にある水路閣がそれで、確かにあの橋はローマの水道橋(といっても実見していないが)を彷彿とさせる見事なものだ。パネル写真には、「建築当時若干23歳の技師田邊朔郎…」といった説明文が添えられている。館内をぐるっと回っていて感じたモヤモヤ、はたと気がつき記念館の事務所に。

「あのう、展示でちょっと気になるのがあったんですけど、直しておかれたほうがいいかと思って」と声を掛けると、年輩の責任者とおぼしき人が応対に出てこられたので案内する。
「これなんですけど、"とても若い"という意味で書かれていると思うんですけど、これだと"数が少ない"ときに使う言葉なので、間違いだと思うんですけど。"冠"という字が正しいですよね」
「ああ、そうですねえ。直さないといかんですね。このあいだも大きな間違いがあって直したんですよ」と、示されたのはご当地九州の耶馬渓橋。日本地図の上にプロットされた場所が間違っていたそうだ。近くの別の石橋と位置が逆になっていたらしく、よく見ると引出線が修正されている。そうか、お節介は私だけではなかった。でも、公共の展示物、指摘して正しい内容になるのだったら、これは小さな親切ではないかと自己弁護する。

一泊二日の旅を終え関西空港に降り立つ。LCC利用で第2ターミナル前に駐車していると、飛行機から車までとても近い。しかもピーチで2往復するとポイントで駐車料金1日分が無料と結構ずくめ。奈良の自宅まで1時間足らず、運転しながら思い出した。

「石橋記念館であんなふうに言ったけど、"若干"って"弱冠"と書くんだったよなあ。"干"が"冠"というだけでは片手落ち、こっちも焼きが回ったか。でも、記念館でも辞書ぐらい引くだろうし。まあいいか」と若干の反省。

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