ディープな東大阪 ~ 司馬遼太郎記念館あたり
2015/8/2

奈良市美術館で開催されている「入江泰吉と須田剋太の奈良」という展覧会に出かけたカミサンが、ネットでいろいろ調べ、東大阪に作品を展示している喫茶店があるとの情報を見つけ、行ってみたいと言う。「どこ? 小阪? たぶん司馬遼太郎記念館の近くやなあ。行ったことある?」と尋ねる。

喫茶美術館でもらった散策マップ 司馬遼太郎記念館の入場券

私は前に司馬遼太郎記念館を訪れているが、カミサンはない。それならと、暑いなか東大阪探訪に出かける。
 入場券を買うと入口で団扇を渡される。展示館に入る途中、司馬遼太郎の書斎を庭から観るような順路になっているので、蚊除けの団扇らしい。
 中に入ると、今は「世に棲む日日〜吉田松陰と高杉晋作」という企画展が行われている。私は司馬氏の著書を一冊も読んでいないが、カミサンは幕末ものを中心に何冊か読んでおり、興味津々のようす。もっとも、テロリスト集団の長州人には批判的で、会津に肩入れする立場だ。大河ドラマ史上ワーストのひとつと言ってもよい放映中のものの影響か、酷暑にもめげず観覧者が途切れない。

私は二度目なので勝手が判っているから、特に目新しいこともない。そうなのか、ここも最近お騒がせの安藤忠男氏の作品だ。デザインは悪くないが、またも気になるのは書架のこと。膨大な蔵書を手に取ることも叶わぬ高さの書架に死蔵してその量を誇示するように展示するのは品位に欠ける。司馬氏自身がどれだけ読んだのか知らないが、これじゃ貴重な書籍が泣いている。
 そんな書架を見ているうち、またもヘンな表示に気がついた。司馬氏の作品には海外で翻訳出版されたものもあり、国別に展示されている。パネルに「簡体字」とあるので、これは中国で出たものだろう。ところがその英文表示がいけない「Simplifide …」となっている。もちろん「Simplified…」が正しい。この日も外人の来訪者を見かけたし、これは放っておけない。早速、職員の人にお知らせする。「すみませんね。細かいことを言って」とカミサンが横からフォロー、鹿児島のときと同じだ。ぼーっと見ていても不思議に間違いが目に飛び込んでくるのは困った性分かも。でも、私も読者である産経新聞の記者、福田定一氏には感謝されるかも。それに学科は違うが私も一時在籍した大阪外国語大学の先輩でもある訳だし。

2015年後期連続講演会というポスターに目が止まる。 3回シリーズで柳田邦男氏、佐藤優氏、竹下景子氏という講師の顔ぶれがすごい。150人の小さなホールというのも贅沢なもの。通しで7500円ということなので、すぐに満杯になるだろう。いや、東大阪だから財布の紐は固いかな。

これが喫茶美術館への入口 喫茶美術館の看板 帝国キネマ長瀬撮影所跡に立つ樟徳館の外観

さて、次は喫茶美術館だ。近くだとは思うが、カミサンは地図を持ってきていない。それではと、スマホで検索して車を走らせる。このあたりと思ったところの道ばたに小さな立看板があった。そこからゲートじゃなくてビルの1階部分を突き抜け、中庭のような空き地の奥が目指す喫茶店だ。こりゃあ普通は来られない。ふらっとお茶を飲みに入るような場所じゃない。ヨーロッパにはよくこんな場所があるけど、ここは東大阪、河内のど真ん中なのだ。

入口には司馬遼太郎氏の揮毫になる立派な看板があり、おそるおそる扉を開ける。想像したよりもずいぶん広い店内に客は誰もいない。コーヒー500円、展示品を観るだけなら300円。須田剋太の作品が壁いっぱいに架かっている。調度は全て松本民芸家具、重量感のある桜材のテーブル、椅子、カウンターが多数並ぶ。椅子一脚でも十万円は優に超える。この家具に著名な作家の作品群、このビルの一室にはどれだけの資産があることやら。面白いのは、美術館なのでお静かにとか、10名以上の団体での喫茶はご遠慮をとか、喫茶店らしからぬ断り書きがあること。とても喫茶店として採算が取れているとは思えないし、いったいどういう店なのか。まあ、私もカミサンも門前払いされなかったので、客として認めてもらったということか。静かな店内の展示を見ながらケーキセットをいただく。

このあと、長瀬川のほとりに立つ徳館という豪邸を観に行く。かつて帝國キネマという映画会社の長瀬撮影所だったところで、跡地に木材商として財をなした樟蔭学園の初代理事長森平蔵の私邸が建てられ、今は同学園の施設となっている。国の登録文化財らしい。中には入れないが撮影所だったと言うからには相当な広さだろう。河内小阪駅の近くにも撮影所があったらしい。小阪で映画を撮っていたなんて全く知らなかった。この河内小阪駅前には、宮本順三記念館・豆玩舎ZUNZOというグリコのおまけを蒐集した私設展示館があって、そちらにも寄ってみたかったが、もう夕方近くになったので断念、万代百貨店で夕食の材料を買って帰る。魚の値段がずいぶん違う。思わずあれもこれもと買い物かごに。さすが東大阪、物価が安い。 お昼はケーキだけだったが、晩ごはんは豪華版だ。

ジャンルのトップメニューに戻る。
inserted by FC2 system