久しぶりに国立文楽劇場 〜 玉藻前の外連
2015/11/23

公演のチラシ

三日連続の劇場がよい。この日はカミサンと同道、というよりもカミサンのリクエストで購入したチケットだ。きっかけはテレビの番組で勘十郎さんが出演し、11月公演で取り上げる玉藻前の解説やら早変わりの映像の紹介などがあり、面白そうとなったこと。錦秋公演の千穐楽に日本橋に出かける。夕方4時開演の午後の部、「玉藻前曦袂(たまものまえあさひのたもと)」の上演だ。

早めに着いて展示室をぶらぶら。玉藻前に関わる文楽の舞台、のみならず絵巻、絵本、錦絵、さらに歌舞伎やコミックの資料などが集められていて興味深い。過去、色々なものに取り上げられたお話のようだ。九尾の狐のことは知っていたけど、それと玉藻前という人物とが結びついていたことを知らないのだから、私の知識も高が知れている。

冒頭、清水寺の段はちょっと退屈してしまった。物語の導入部分なのでこんなものだとは思うが、開演前に隣のたこ焼き屋でピールを飲んだのがよくなかったか、つい船を漕ぐ始末。だが、次の道春館の段になると、俄然お話は佳境に入る。太夫の引退やら休演が相次ぎ高齢化の影が覆いようもない文楽の世界だが、長大な奥の部分を務めた竹本千歳太夫の熱演で盛り上がる。

後半の段になるといよいよ九尾の狐の登場、桐竹勘十郎の大車輪の活躍となる。なんと、宙吊りまである。物語が一段落した最後の化粧殺生石はお話としては付け足し、九尾の狐の七変化を見せる場面でしかないが、理屈抜きで楽しめる場面だ。いわゆる外連味のある舞台、多数の三味線、太夫をバックに早変わりで湧かせる。正直なところ、よく出来た物語とは言えないが、見せ場たっぷりの派手な舞台だ。上演されるのは何十年ぶりとかのようで、それはなんとなく納得してしまう。

いつもの幕見じゃなく、珍しく数日前に1等席を買ったのだが、かなり後ろのほうの席だった。祝日で千穐楽ということもありほぼ満席。出演者も高齢化なら客席も高齢者ばかり。我々夫婦でも平均年齢を下げているぐらいだ。外国人観客のほうがずっと若いというのもどうなのかなあ。
 前日の大阪府知事・大阪市長のダブル選挙で大阪維新の会候補が完勝した。文化的素養を著しく欠く橋下市長に煮え湯を飲まされた文楽協会としては、これをどう受け止めているだろうか。厳しい道のりは続きそうだ。

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