満を持して青春18きっぷ 〜 やはり、嵐を呼んだか
2015/12/10・11

青春18きっぷ

夏の青春18きっぷを買い損ねたので、今回は12月に入ってすぐ、発売早々に購入した。もちろん、利用期間中ならいつでも購入できるのだけど、特別のきっぷ、赤い青春18きっぷはオタオタしていると売り切れるのだ。この全国でも販売駅が限られているレアチケットをJR奈良線玉水駅で購入する。
「これ、大勢買いにくるんと違いますか」と尋ねたら、
「冬はそんなこともないけど、夏は早いわあ」と民間委託の駅員のおじさん。

買ったはいいが、どこに行くとも決めていなかった。そうこうしているうちに、年明けから働くことが決まったので、未使用分をオークションにかけるとしても早めに使わないと。すると、あったあった、金沢で注目のコンサートが12月10日にある。まさに、利用期間のスタートとぴったり。これで北陸方面に決定、金沢に泊まって戻りは高山本線経由だ。私は正真正銘の乗りテツでもないので、乗る以外の目的、楽しみもないとね。二日目は下呂温泉に浸かることにしよう。

近江舞子駅から比良山系 福井駅前の恐竜 金沢駅正面 七尾線とうはくん

平日なので朝のラッシュは避けたい。計画よりも早く出発、京都まで出て青春18きっぷの使用開始となる。最終到着時刻は変わらないので、乗り継ぎを刻んで行くことになる。乗換の都度、駅の内外をウロウロ、これはエコノミークラス症候群の予防だ。近江舞子では比良山系の紅葉、福井では駅前の巨大な恐竜など、わずかな時間に見どころもある。もっとも、車内にいても、座席とお立ち台(最前部運転士の後ろ)とを行ったり来たりで、運動不足にはならないが。

本来は不要の途中下車の印をわざわざ押してもらうのは、赤きっぷを持つマニアの定番のようで、駅係員も心得たもの、「どのあたりに押しましょうか」と聞いてくれる。ただ、同じJR西日本なのに北陸三県では下車印が大きすぎるのが難点だ。ほんとは駅名だけのカラフルで可愛いいのを期待したのだけど…

・京都 7:32発 〜 米原行 〜 山科 7:37着
 ・山科 8:01発 〜 近江舞子行 〜 近江舞子 8:44着
 ・近江舞子 8:51発 〜 (新快速)敦賀行 〜 敦賀 9:50着
 ・敦賀 9:53発 〜 福井行 〜 福井 10:47着
 ・福井 11:12発 〜 金沢行 〜 金沢 12:41着
 ・金沢 13:29発 〜 七尾行 〜 七尾 14:57着 (お寿司を食べに)
 ・七尾 16:00発 〜 金沢行 〜 津幡 17:10着
 ・津幡 17:29発 〜 金沢行 〜 金沢 17:41着 (コンサートは19:00開演)

開通のずいぶん前から金沢駅は立派になっていたが、新幹線の開通でとっても賑わっている。「金沢に来るなら、春か夏か秋か冬がいいと思います。」なんて垂れ幕が下がっているあたり、「日本に、京都があってよかった。」と同様に、鼻持ちならないニュアンスを含んでいるのが瓜二つのように思えるなあ。

七尾線を往復したのは未乗路線だったこともあるし、七尾で早めの夕食というつもりもあった。「とうはくん」という奇妙なキャラクターがペイントされた電車で七尾を目指す。七尾は長谷川等伯の生誕地らしい。
 七尾湾は天然の生け簀、ここで早めの夕食、もちろんお寿司。微妙な時間帯だし街中まで出る時間もないので、駅前の回転寿司(ちっとも回転なんてしていない)で、ちかい(メジナ)、ふくらぎ(ブリの幼魚)、ほうぼう、生さば、あまえび、ばい貝など。

新幹線開通に伴って、金沢から先の北陸線は各県ごとの第3セクターに移行した。JRでなくなったことにより、青春18きっぷでは乗れないはずだが、特例措置があって金沢〜津幡、高岡〜富山の区間は途中下車しない限り無料で乗車できる。七尾線、氷見線、城端線というJRローカル線が孤立してしまうのを避けるためだと思われる。その伝で行けば津幡〜高岡は別途第3セクターの運賃が必要となるはずだが、直通列車で移動する限り運賃の徴収は実態的にない。これは翌日乗ってみて判ったこと。どだい運用には無理がある規則だと思う。

12月も中旬になろうとしているのに暖かい。低気圧が発達して日本列島を進んでいる。気温の上昇は南から吹き込む風のせいだ。明日は荒れ模様との天気予報、列車に乗る分には天気は関係なくても、鈍行乗り継ぎの旅にはダイヤの乱れは致命的なのだ。金沢駅前の石川県立音楽堂でのコンサートを聴いたあとは、駅ビルの中で金沢名物のおでんで一杯、翌日の早起きに備える。

高山本線猪谷行き 12月11日の天気図

またしても、予定よりずいぶん早く目覚めて、さっさと出発。まだ雨は大したことはない。予定の高山本線の列車に富山で乗り継ぎが出来そうなので、氷見線の往復を組み込む。高岡駅では忍者ハットリくん列車が待っていた。藤子不二雄A氏が氷見市の出身のようだ。前日の長谷川等伯との対照がいかにも両地らしくて面白い。
 夜明け前なので景色は見えない。戻りの雨晴海岸あたりで白んできたものの、線路の側まで寄せる波は見えても、富山湾越しの立山連峰を期待するのは無理。どうせこの空模様だし、電車の中に掲示された絶景のポスターで我慢するしかない。

・金沢 5:17発 〜 富山行 〜 高岡 5:53着
 ・高岡 6:00発 〜 氷見行 〜 氷見 6:27着
 ・氷見 6:38発 〜 高岡行 〜 高岡 7:08着
 ・高岡 7:13発 〜 猪谷行 〜 富山 7:37着  (朝食は駅構内の立山そば)
 ・富山 8:14発 〜 猪谷行 〜 猪谷 9:05着
 ・猪谷 9:11発 〜 高山行 〜 高山 10:18着
 ・高山 10:24発 〜 美濃太田行 〜 下呂 11:27着  (日帰り温泉に)
 ・下呂 13:44発 〜 美濃太田行 〜 美濃太田 15:10着
 ・美濃太田 15:29発 〜 岐阜行 〜 岐阜 16:03着
 ・岐阜 16:20発 〜 大垣行 〜 大垣 16:32着
 ・大垣 16:37発 〜 米原行 〜 米原 17:12着  (ここからはダイヤが混乱)
 ・米原 17:48発 〜 (新快速)播州赤穂行 〜 京都 18:42着

砺波平野からの立山連峰

ところが、である。その立山連峰が見えたのだ。富山から乗車した猪谷行き、越中八尾に近づく頃、西の方角に全景が現れた。と言っても、不気味に垂れ込めた黒雲と砺波平野に挟まれたパノラマだ。北は毛勝三山から劔岳・立山、さらに南は鷲岳・鳶岳あたりまで。何とも不思議な眺めだ。

猪谷駅から乗り継ぐ高山行き

富山県の最後の駅、猪谷、昔ここから国鉄神岡線に乗り換えて北アルプスに向かったことがあったかも。それが第3セクターを経ていまは廃線、今年のノーベル賞で注目を浴びたカミオカンデは神岡鉱山跡を使っているのだろう。猪谷はそんな華やかな話題とは無縁な無人駅だ。ここからJR東海エリア、同じホームの先で待っている列車はちょっと上等だ。これも会社の収益力の違いかな。

高山の手前、飛騨古川に停車中にひどい雨になる。台風のような降り方で、激しく降るかと思えば、あがって日差しが漏れたりと気まぐれだ。高山での乗り継ぎのときは、晴れているのに駅構内は水たまり状態、駅員さん総出で箒で排水とは、直前までの降りの凄さが想像できる。

こんな調子だと、下呂で途中下車しても、温泉街まで歩くのも大変だなあと心配したものの、到着したら雨はあがっていた。ここで2時間あまりの滞在なので、ゆっくり日本三名湯のひとつに浸かれそう。

白鷺の湯 白鷺の湯玄関 下呂駅ホーム

観光案内所で教えてもらった白鷺の湯に決めた。古くからの公衆浴場なので370円と安い。二階に上がって浴室はまた下に降りる。檜の浴槽はかなり年代物だが綺麗で気持ちがいい。こんな時間だから客もほとんどいない。これは贅沢なひとときだ。

「いいお湯でしたよ」と、出かけに声をかける。
「下呂、じゃないですよね。どちらから」
「いえ、金沢から」
「お車ですか」
「へへっ、青春18きっぷで。これから奈良まで戻ります」
「あらあ、そうなんですか。どうぞお気をつけて」

温泉寺 下呂温泉街

まだ時間がありそうなので、山の中腹の温泉寺に登ってみる。ここからは温泉街が一望だ。境内を掃除しているおばさんが言うには、「いやあ、えらい雨風で、こんなに葉っぱや枝が飛んで」
 雨男のくせに今回は運がいいのか、ちょうどタイミングがよくて、私は昨日から一度も傘を開いていない。

飛騨川の濁流

湯上がり、ビールとおつまみを買って美濃太田行きに乗る。右に左に替わる飛騨川は豪雨のあとで濁流に近い状態だ。中山七里というあたりになるのか、まだ紅葉が残る車窓に目をやるうちに眠気が襲って来る。障害物と接触したとかで急停止したらしく、それで目が醒めた。もう平野を走っていて美濃太田も近い。美濃太田で乗り換え、岐阜で乗り換え、大垣に着いたら、もう帰ってきたような感じがするが、実はそこからがいけなかった。

大垣から米原に折り返す普通列車がなかなかやってこない。米原にようやく到着しても、その先JR西日本管内は無ダイヤ状態になっている。発達した低気圧の強風で、神戸市内で摩耶新駅の工事足場の倒壊、湖西線の特急の米原迂回など、複合的要因で混乱の極みか、次に出る列車の案内がコロコロ変わる。遅い時間じゃないし、ここまで来ればゆったりと構えておればいいから、私は落ち着いたものだが仕事で動いている人たちはイライラが隠せない様子だ。

このダイヤの乱れが、行程半ばで発生していたら、大幅な予定変更を余儀なくされたところだ。出かけると雨、には慣れているけど、今回は嵐まで呼んでしまった。まあ、旅なんて不確定要素があるのが普通だから、それはそれで何とか対処することだって楽しみの一つと考えればいいのだ。さて、青春18きっぷはあと3回分、どう使おうか。

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