️天王寺七坂巡り 〜 上町台地あれこれ
2016/2/28

近鉄のハイキングに出かけると、なんだか自分のルーツを遡るような感じがする。興味をそそるコースには、何らかのゆかりがあるから、そうなるのだろう。今回参加したのは、「風情ある天王寺七坂とぶらりお寺巡り」というキャッチコピーのイベント、コースは次のようになっている。

大阪上本町駅…真言坂…生國魂神社…源聖寺坂…口縄坂…愛染坂…清水坂…天神坂…逢坂…一心寺…大阪上本町駅

大阪上本町駅、上の世代なら上六(うえろく)と言うのが普通だったが、いまはどうなんだろう。そういう呼称はもう過去のものかな。タクシー乗場だった駅の南側のスペースは広場になっている。隣接のビルには難波から移転した新歌舞伎座が入っている。このYUFURAビルに建て替えられる前は近鉄劇場があったところで、初めてオーケストラの演奏会を聴いたのがここ、オペラの公演もあったはずだ。

千日前通を西に向かい谷町筋を越えて阪神高速の高津ランプが見えるあたりから下り坂になる。つまり、上町台地の西の端ということだ。この先、大昔は海だったところ。七坂というのは台地の西側に並んでいる。千日前通が台地を下りたところが下寺町、生國魂神社の門前、ここに母方の祖父母がいたことがある。お相撲さんに抱き上げられた写真があったが、どこかに行ってしまった。大阪場所にはこのあたりに並ぶ寺に相撲部屋が引っ越してくるから、そういうときの写真だったんだろう。

下寺町の交差点の少し手前、南に折れる小径が真言坂、突き当たりには生國魂神社の鳥居が見える。小さいときに来たことはあると思うが、記憶は全くない。境内に入ると、本殿以外にも神社がいっぱいあるのだ。城方向(きたむき)八幡宮、鴫野神社、鞴(ふいご)神社…はては浄瑠璃神社まであるぞ。ここは「曽根崎心中」の舞台にもなった場所だから不思議ではないが。

神社だけではなく、織田作之助の像もある。この人は確か高校の先輩のはず。かと思えば、芭蕉の「菊に出て奈良と難波は宵月夜」という死の直前の句碑があったり、上方落語発祥の地・米澤彦八の碑というのも。賑やかなこと。神社を取り囲むのは大阪屈指のラブホテル街、高校の屋上から看板やオブジェを眺めるだけで世界旅行ができたが、ネーミングも時代とともに変わってきている。

七坂を順に辿って行くのだから、上町筋と松屋町筋の間を上っては下る繰り返しになる。しかし、Matsuyamachiという道路標識の表記は気になる。これはローマ字ならMacchamachiとするのが正しい。京都あたりなら道路行政当局に楯突いて標準化に背を向けるところだが、大阪は「そんなんどっちでもええ、まっちゃまちは、まっちゃまちや」という感じだろう。

源聖寺坂を下り口縄坂を上る。口縄というからには蛇行しているのかと思えば、わりと真っ直ぐなのもおかしい。それを、登り切ったところが夕陽丘。長男の通っていた学校がオンボロ校舎を建て替えて見違えるようになっている。なんだこりゃと思いながら、学校脇の愛染坂を下る。

清水坂を上り、天神坂を下る。名前の由来は坂を下りたところにある安居天神による。神社の境内に真新しい「真田幸村戦死跡之碑」というのがあって、びっくり。人が多いのはそのせいか。NHKの威光はさすが。でも、正月から始まった「真田丸」、まるでつまらない。大阪制作の木曜時代劇「ちかえもん」の面白さとは対照的だなあ。

安居天神の境内には古い井戸がある。上町台地の裾には湧き水が点在しているようで、これもそのひとつになるのだろう。社を後にしたらそこは逢坂ということなのだが、坂らしくない。国道25号になっているから、いつしか平坦化されたのだろうか。道路の向こうは一心寺。ここも入ってみてびっくり。何と、仁王像が現代アートだ。いちおう阿形と吽形になっているからスタイルは継承しているものの、こりゃまた大胆な。このお寺は大坂冬の陣で徳川家康の本陣だったらしい。道を挟んで、まさに真田幸村の終焉の地と対峙している。

これでハイキングのスポットは終わり。四天王寺の境内を抜けて茜丸の本店でどら焼きを買う。このハイキングに協賛とかで、マップを見せたら10%引きで、これがお土産だ。

あとは上町筋を北にまっすぐ出発点の上本町駅に戻るだけ。途中には、わずかな期間在籍した大学の跡地に建つ大阪国際交流センター、ここは上本町八丁目あたり。七丁目にはよく行った喫茶店や洋食屋も健在だ。でも、やっぱり食べるのはここ、ハイハイタウンにある南海飯店。学校帰りに餃子を食べに何度立ち寄ったことか。それからすると、もう50年近く通っていることになる。再開発されても場所は変わらないが、昔はまだ闇市の名残がある狭い路地、壁に鳥居マークが並んでいたような場所だった。それが転じた雑居ビル中央の吹き抜けには巨大な真田幸村のフィギュアがぶら下がっている。二年前ぐらいからなので、大河ドラマ便乗ということでもなさそうだ。ここは大坂夏の陣400年にちなんで、緒戦勝利の地ということのようだ。一階の奥、南海飯店の餃子は大きめのサイズ、二人前で結構お腹が膨らむ。それを三人前たいらげ生ビール二杯で1300円也、美味しさも安さも変わらないのは嬉しい。と、最後はやはり褌の川流れか。

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