️オペラの前に湖東をぶらり
2016/3/5

うっかりしていて、春の青春18きっぷの発売日を過ぎていた。期間中ならいつでも買えるのだけど、赤い青春18きっぷでないとどうも気分が盛り上がらないのだ。 2月も終わり近くになって、いつもの奈良線玉水駅で「青春18きっぷ、ありまっか」と尋ねると、「売り切れやあ」 と民間委託のおじさん。「桃山に行ったら残っているかもしれんわ」と言うので、奈良線沿いにクルマで北上、桃山駅まで行かなくても長池駅で赤きっぷをゲット。利用期間は3月10日からだと思っていたら、1日から使用可なんだ。赤きっぷ、ちょっと遅くなると、なくなってしまう。でも、JR奈良線は全国でも稀少な赤きっぷの宝庫だ。

丸一日使って乗り倒すという使い方もあるし、2370円以上なら元が取れるので近場で使うという手もある。今回は後者、びわ湖ホールに出かけるのに使ってみた。朝早く出て、東海道線で大津を素通りし、長浜の先の高月駅まで。駅の近くにあるお寺の国宝十一面観音が一見の価値ありと聞いていたからだ。

寺の名前は向源寺という。長閑な田舎道を歩くこと10分足らず、9時を過ぎたばかりで参拝客の姿はない。そもそも京都あたりに来る観光客はここまで足を伸ばさないのだろう。誰もいない境内を歩くととても気持ちが落ち着く。十一面観音は本堂とは別棟に置かれていて、特別扱いということだ。同じく国宝の奈良の聖林寺十一面観音も別棟にあるがガラスケースの中だった。ところが、こちらの仏様はケースどころか背面にも回れる360°の展示、間近に拝めるというのは素晴らしい。係の人がやって来て一人きりの参拝者に詳しく説明してくれる。

やさしい顔をした仏様だ。たおやかな体の線が美しいし、おへそが出ているのが何だかセクシーでもある。手の長さは人間より遙かに長いのだが不思議にバランスがとれていて不自然さがない。撮影禁止なので写真を掲載出来ないのが残念。これだけの仏像が湖東の辺鄙なところにあるとは。もっとも、桜の季節になるとかなり賑わうらしい。

しばらく十一面観音と対面していると、ぼちぼち参拝客もやって来た。1時間に1本の上り列車に乗り遅れないよう駅に戻る。長浜駅まではすぐだ。次のスポットは長浜鉄道スクエア、青春18きっぷで訪れるに相応しい場所だ。前にカミサンと長浜に来たことはあるが、黒壁スクエアあたりを回っただけで肝心のてっちゃん名所に行く時間がなかった。その忘れものをとりに来たようなもの。

旧駅舎を移設したミュージアムで、その駅舎時代が文化財なのだが、人によって興味のありどころが違う。てっちゃんにも様々なバリエーションがあるということ。私がいちばん興味をひかれたのは古い鉄道地図や時刻表、明治時代の鉄道のありようを偲ぶ何枚もの資料は見飽きない。東海道線が全通するまでは長浜・大津間は水行だった。近江盆地を直行する鉄路を敷くのは、さほど難しいことではなかったはずだが、先に水運があったから後回しにされたのだろうか。

鉄道スクエアの通り向かいでは盆梅展が開かれていて、そちらの人出のほうがずっと多い。立ち寄っている時間はないので腹ごしらえに向かう。目指すは長浜名物の焼鯖そうめん、素麺と鯖という取り合わせは信じがたいが、ものは試し。古民家ふうの店の二階に上がっていただく。汁を切った素麺にこんがり焼けた鯖の切り身がのっかっている。身をほぐして素麺に絡ませて食べるのが流儀だろうか。曰く言いがたい味。嵌まる人も多いと聞くが、また食べたいとは思わない。むかし、長浜に泊まって鴨づくしということがあったけど、鍋には砕いた骨が混じったつみれが入っていて、ジャリジャリという食感がいまひとつだったのを覚えている。これまた琵琶湖名物の鮒寿司は食べたことがないが、強烈な臭さらしい。どうも滋賀の旨いものというのは、私には敷居が高いなあ。さて、新快速で石山へ。

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