️姫路・高松・徳島、麺喰い青春18きっぷ
2016/3/20

ついこのあいだ、年が明けたように思うのに、もうお彼岸、季節の巡りは歳とともに速くなるような気がする。でもあとひと月あまりは花粉に悩まされるのだから、こっちのほうでは時の移ろいは遅く感じるのが不思議。そうだ、残り3回分ある青春18きっぷを早く使わなくては。

早起きして大阪環状線の鶴橋発6:24の内回りで青春18きっぷのスタート、大阪からは網干行きの快速に乗り姫路で下車する。赤穂線の電車は、分岐駅の相生ではなく姫路から出る。大阪から遠くもないのに、赤穂線は未乗路線のひとつだ。先に向かうなら山陽新幹線や山陽本線経由だし、そもそもこのあたりに用事がないからだろう。

播州赤穂行きの電車が来るまで、ホームの「えきそば」だ。これはB級グルメの真骨頂、中華麺に和風だしというミスマッチの商品で、なぜか病みつきになる。というのも、子どもの頃に家で食べたことがあるから。油揚げをのっけたものを注文するが、これはきつねと言うのだろうか。そばだから(関西ふうに)たぬきとも言えるし、麺の色からするときつねが似合っている。姫路はこれ。

あっという間に平らげると大阪周辺では見ないJRの黄色い電車、これは播州赤穂までで、そこから先は乗り換えになる。9:12に着いて次の列車は10:00発、小一時間の赤穂観光に駅を出る。まっすぐにお城通りを1kmほど行くと赤穂城趾、例の江戸城中刃傷事件で改易となった際に壊されたのかと思っていたら、そうではないらしい。藩の財政難で天守閣造営に至らず、その他の建物は明治時代に破却されたらしい。なんとなく勝手に想像してしまうのは、有名になりすぎた仇討ち話のせいか。城趾には大石神社というものまである。赤穂城、わずかに残った石垣や堀に近年の櫓などの再建で今の姿らしい。そりゃあ、地元としては目に見える観光資源がほしいのだろう。

播州赤穂から乗車したのは備中高梁行、こちらも歴史に残る城のある街というのも面白い。この黄色い電車は岡山を経由し伯備線に乗り入れているのだ。赤穂線は山陽新幹線と併走したかと思うと、ぐっと南に迂回して岡山に向かう。長船駅で長時間停車、刀剣で有名な場所だ。平成の大合併で誕生した瀬戸内市というのはどこかと思っていたら、ここだった。

西大寺駅はわが家の近くにもあるが、ひょっとしたら、奈良よりもこちらの西大寺のほうが、はだか祭りで有名かも知れない。その駅のホームには祭の写真入り看板がある。線路の向こうは学校で、ホームから見えるように、こちらに向けた看板に「東大現役合格○○○○君」と特筆されているのにはたまげる。個人情報保護もへったくれもない大らかさ、学校の宣伝、一家の誇りということか。まあ、都会でも電車の吊り広告に同じような趣旨の予備校広告があるから、岡山だけが田舎ということでもなさそうだけど。

岡山11:33着、高松行の出発が11:42なので気ぜわしい。マリンライナーの先頭車両最前列の指定席には以前乗ったことがあるので、今回は最後尾に立つ。外国人観光客のおばさんが海上に出た途端、カメラを持って動き回る。きっと海を渡る鉄道に乗ったことがないのだろう。

そして四国に入る。岡山から高松まで、ずいぶん近い、充分に通勤通学圏だ。鉄路が繋がっているということは大きい。廃線となってもあちこちにその遺構が保存されているのは、鉄道には道路にはない愛着があるからだと思う。

高松の乗り換えも忙しい。徳島まで直通する普通列車を逃すと、次の列車まで間が空きすぎる。さりとて、高松に来てうどんを食べないなんて考えられない。駅に着くなり、ホームの行き止まりの「連絡船うどん」に駆け込む。12:35着で12:50発だから他に選択肢はない。そこは良くしたもので、「うどん県」だけのことはある。定番ぶっかけの冷たいやつ、駅構内の店でも十分に美味しい。そりゃそうだ、玄関口の店が不味かったら話にならないもの。そして次にすること、改札口を出て途中下車印を赤い青春18きっぷに押してもらう。トイレを済ませ駅前の喫煙コーナーで一服すれば発車時刻が迫る。

高松駅を同時刻に発車する列車がある。しばらく並走して右に別れていく。あれは予讃線の特急いしづち。ここはJRには珍しいターミナル型の駅だからこんな光景が見られるのだ。

徳島行きは一両のみの編成、発車時はかなり混み合っていたが、誰も遠慮して立たないのか運転席の横のスペースが空いている。てっちゃんの指定席、完璧なお立ち台だ。栗林公園北口でだいぶ観光客が降りて席も空いたが座るはずもなし、栗林公園、屋島、五剣山と続く眺めをベストポジションで独り占め。特急通過や行き違いの長時間停車の際に座席で休息する以外は徳島までの2時間、立ちっぱなし。これが正しい乗りテツの旅。

さて、徳島、ここからはフェリーで海を渡るので、時間に余裕をみている。駅前の徳島ラーメンの店に入る。バラ肉の入った味噌仕立てのラーメンで、好きなだけモヤシをトッピングして食べるようだ。値段は安いが味はちょっと微妙、もうひとつの名物、たらいうどんにしたほうが良かったかな。

駅前のバスターミナルで徳島港行きのバスを待つ。ずいぶん賑やかなのは市長選が近いのか、おおさか維新の会推薦候補の応援に大阪府知事が来ている。この人だかりはバス待ちの客だけじゃなかった。

フェリー乗り場まではバスで20分ほど、これに乗るのは二度目だ。和歌山港まで2時間、鉄道の間に船というのもいい。鉄道と違った地図と首っ引きで景色を眺める必要もないし。売店で買った竹輪をかじりながらビールで一杯、気持ちよく昼寝ができる。

乗船券を買うとき、窓口のおねえさんが妙なことを尋ねる。
「和歌山港からは南海に乗られますか」
「うん、乗るけど、一駅だけ」
「それでも、こちらの企画きっぷが使えますよ。値段は同じです」
「ん、2000円、えっ、これ、難波まで乗れるの」
「はい」
「ということは、南海の運賃がタダということなん」
「はい」

これはびっくり、こんなきっぷがあったんだ。和歌山港・難波間は920円だから船と電車あわせて32%のディスカウントということになる。接続する特急サザンは自由席なら特急料金不要だし、JRに乗り継ぐよりも難波に早く着く。もう十二分に青春18きっぷの元は取ったし、一も二もなく「なんば好きっぷ2000」のお世話になる。そう言えば、前に家族で祖谷温泉に行った帰りにフェリーに乗ったときも、社会実験とかいって1000円だったなあ。南海電車もあの手この手、高速道路やJRと競合するフェリーの乗客を確保するには格好つけておれないのだろう。適切な競争は利用者の利益に繋がるのだ。

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