オメガカーブの上、高峰山に登る
2016/4/30

いつもクルマで走る名阪国道、天理と大和高原との間にオメガカーブと呼ばれる事故多発地帯がある。高低差270mの急勾配を避けるために異様な形状のルートとなっている箇所だ。GWの休日、件のカーブの上にある高峰山に登ってみた。

ネット上には高峰山の登山記はいくつもアップされているが、東側の福住から林道を経由して登ったものばかりで、25000分の1の地図に記載されている北西側の谷の記録を見つけることができなかった。きっと地図にはあるが廃道同然のコースだろう。ここはひとつ探検だ。

アプローチに名阪国道は使わない。県道187号福住上三橋線で五ヶ谷インターに向かう。インターを通りすぎで米谷の集落のはずれ、名阪国道の薬師橋陸橋を潜った先の行き止まりが今回のカーデポ地点となる。長閑な山村に交通量の多い名阪国道を走行する車の音が聞こえてくる。そればかりか、ここには妙な施設がある。「五ヶ谷」から来ているのだろう、「ファイブバレイサーキット」というのがそれ。途中に看板が出ていたので、山の中で思いっきりバイクを走らせるためのものかと思えば、ラジコンカーのサーキットだった。それでも排気音は響いている。斯界でも有名人、山本昌投手もこんなところで走らせているのだろうか。

さて、道はあるのだろうか。林道の終点の先に立派な山道が見える。道脇には「不動の滝」という石標まであるぞ。ちょっと登ればその不動の滝に着く。二段になった小さな滝だ。滝の上部へはロープが張られていて登山道が続くのかと思ったら道はそこまで、その先は谷筋を辿って行くしかない。砂防用の堰堤を二つ越える。沢身は倒木が多くて乗っ越すのが大変、半ば藪漕ぎ状態だが密生している訳でもないので、流れの上、両側の斜面と、ルートを探しながら高度を上げていく。軍手と眼を保護するサングラスが大活躍となる。サングラスだとちょっと暗いから花粉対策用のゴーグルぐらいがちょうどよかったかな。

1時間ほど登っていくと尾根が近づいてきた。ほぼ地形図の道どおりに進んで来たから間もなくだろう。戻りはカーデポ地点に向かうことになるので、この谷を下る。谷への下降地点が判らなくなっては困るので、尾根への到達地点、主稜線への合流地点、福住のほうからの道との分岐に木の枝を使ってマーキングを行う。テープでも持ってくればよかったかも。

高峰山の頂上付近は複雑な地形になっている。電波塔のあるピークが二つあり、山道は山頂部を迂回するように付いている。西から南へぐるっと回り込んで福住からの林道の終点に出合うところに山頂への切り開きがある。ちょっと登ればそこが頂上だ。標高632m、生駒山やスカイツリーと同じぐらい。笹と樹林で西側に少し眺望があるぐらい。上空は伊丹へ降下する旅客機の通り道だ。

さて、問題の下りだ。危険箇所はなかったにしても谷の下降となると慎重に行かねばならない。山仕事の人がたまに入るかどうかぐらいの場所だから、事故があっても救援など望めないだろう。とか言いながら、一つ目のマーカーで左の稜線にルートをとって下り始める。しかし二つ目が出てこない。間違ったかなと引き返しながら、ええい面倒だ、隣の谷のようだが傾斜もほぼ同じ、こっちを降りることにする。危ないところがあれば本当に引き返せばいいと方針変更。

よく似た谷でこちらも倒木が多い。朽木だらけなので掴む枝を選ぶのにも気を遣う。靴底はビブラムだから濡れた岩だと滑る。絶対に慌てずゆっくりと。尻餅1回、躓き1回で沢下りを終える。名阪国道の陸橋を潜ったところからスタートしたのに、戻ったのは盛土部、山仕事用に設けられたトンネルから集落に出る。ここは中畑集落のはずれだ。北西方向に平行するひとつ北側の谷を降りたことになる。ともあれ、無事下山。

中畑から米谷へ集落を繋ぐ道を辿る。田植えの時季、棚田にはそろそろ水が引かれている。長閑な山村風景だ。もっとも、山の中だけど五ヶ谷インターのそばだから、天理へは10分足らずだし、1時間もかからず大阪市内に出られるという妙な場所だ。ここらの人たちはどうしているのだろう。

連休で混んでいるかも知れないので、戻りも名阪国道は使わず県道を行く。天理インターの混雑が予想されるときに私は良く使うのだが、地元のクルマ以外はあまり走っていない。盆地に出る少し手前の山間部に精華小学校という学校がある。高峰山の頂上には、この学校が登山の際に設置した山名標が立っていた。彼らはどこから登ったのだろう。学校からの最短ルートだと私がとった道だが、小学生の山登りには危険すぎる。やはりマイクロバスで福住インターまで回って東から林道経由というのが妥当だろう。

高峰山の頂上には精華小学校の山名標の他にもいくつか小さなプレートがぶら下がっていた。暑いので三角点の裏手の木陰でおにぎりを食べていたとき、草むらの中の木製プレートが眼に入る。針金が朽ち落ちてしまったらただのゴミ、拾ってリックに入れる。途中のゴミ箱に捨てるつもりが、それを忘れてしまい、家まで持ち帰ってしまった。二つのプレートはどちらも大淀独歩会、平成17年と24年の日付がある。新しいものを取り付けるなら、古いものを回収すればいいのにと思うのだが、どうもそうではないらしい。泥を洗い落とすとなかなか手間をかけた山名標だ。世の中にはヘンなものを蒐集する人がいるが、美化清掃も兼ねて山登りの記念にこういうものをコレクションするのも面白そうだ。

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