岳南電車に乗る
2016/6/5

東京からの帰路、青春18きっぷの時季ではないので、どうせ新幹線なら少し東海道の回り道をしてみよう。まだ乗ったことのない御殿場線と岳南電車のセットというルートにする。ちょうど梅雨入りしたようで、天候は心許ないけど。

熱海行きの電車で国府津で下車する。小田原の手前、ここが御殿場線の分岐となる。入線してくる電車がちょっと違うぞ、白っぽい車体にオレンジ色のライン、そうか、ここからJR東海のエリアになる。静岡県の熱海までJR東日本、その逆に御殿場線は神奈川県のここまでJR東海だったのだ。なんだか発見したような気分になるのはテッちゃんの病膏肓というところか。

昔はこちらが東海道線だったとは思えないほどローカル線の風情が漂う。2両編成の鈍行でトロトロ走っていると、松田駅で突然ブルーの長い編成の特急車両と遭遇する。なんだか場違いな感じだ。あっちは小田急車両、沼津まで乗り入れている特急あさぎり、昔の色とはだいぶ違うなあ。
 御殿場を過ぎて富士の裾野が広がる。何とか山の姿も確認できる。夜来の雨も上がったようだ。

沼津駅にはこれまで二度下車したことがある。最初は友人の結婚披露宴のときで、二度目は船で伊豆方面に渡ったときだ。今回は浜松方面への列車乗り継ぎ、お昼どきなのでここでホームの駅そば、簡単な手順だけどスタンドのおばちゃんの作り方が丁寧だ。びっくり、ここは創業明治24年の桃中軒という老舗らしい 。味付けは関東のものだけど意外に美味しい。西が濃くなり、東が薄くなる、味覚の東西差は昔に比べるとだんだん縮小してきている。

沼津から吉原まではわずかの乗車。さて、ここから岳南電車が出る。終点の岳南江尾までの短い路線の私鉄が、よく潰れずに営業しているものだと思う。1時間に2本程度走っているようで、たった1両の電車、市街地とJRの駅とを結ぶ路線は、工業地帯の通勤や通学の足としてのそれなりの需要があるのだろう。むかしの東急の電車とよく似た車体、やっぱり製造は東急車輌だった。

吉原駅を出ると工業地帯の中を抜けていく。御殿場線からはだだっ広い裾野をひく山容だったが、岳南電車では工場施設の上に乗っかった富士という眺めとなり対照的だ。終点の岳南江尾まで20分程度、新幹線の高架を潜った終点は無人駅だ。側を猛スピードでアイボリーの車体が走り抜ける。

岳南江尾駅には乗ってきた電車とは補色の位相に近い緑色の2両編成が留置されている。エンブレムには「かぐや富士」とある。イベント列車として使っているのだろうか。なるほど、竹取物語には富士山が登場したはず、確か、あの話の中では火山活動中で噴火していたのではなかったかな。

行き止まりの盲腸線なので、1台あとの電車で吉原に引き返す。往きより晴れ間は広がり山容の三角形もはっきりした形になった。梅雨のさなかだけど、いちおう"岳南"電車らしくなった。

吉原からいちばん近い新幹線駅は某宗教団体御用達の新富士駅だけど、ここは在来線との接続がない。岳南電車の延伸という話もあったらしいが幻に終わったようだ。したがって乗り継ぎは静岡駅となる。ここなら1時間に1本ひかりが停車する。帰路は名古屋まで新幹線、そこから近鉄特急というパターンなので、ここで晩飯。近海の魚でも食そうと駅ビルの沼津魚がし鮨という店に入る。待ちの人がいるので人気店なのだろう。注文した品が出てきて量が半端じゃないのに驚く。鯛のあら煮に身がこんなに付いているなんて見たことない。重くて箸で裏返すのが大変なぐらいだ。繁盛しているのも頷ける。あちこちに店があるらしい。生ビールと冷酒二合ですっかりよい気分、あとは乗換だけには注意。

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