あっちこっち、図書館めぐり
2016/6/23

週に3日の仕事に就いてから、国立国会図書館関西館が平日の過ごし方の一つになった。けいはんな学研都市の真ん中にあるので、自宅から車を20分も走らせれば到着する。まずはカミサンを誘って見学ツアーに申し込んだ。もう一人女性が参加していただけで、この日の見学者は3人。係の人が懇切な説明をしてくれた上に、細かい質問にも的確に答えてくれるし、さらに書庫の中まで案内してくれる。この1時間あまりのツアーはお勧めだ。そして、その日に利用者登録も済ませ準備完了。また、図書館のカードが一つ増えた。

これで私の定期入れに収まっている図書館のカードは6枚、いちおう全て有効。国のほか、奈良県、奈良市、大阪府、大阪市、それに京都市だ。図書館だから同じようなものかと思うと、それぞれに特色がある。使い勝手の良し悪しもあり、一様ではない。したがって、そのときどきのニーズに合わせて、行先や利用の仕方も変わる。人間同様、図書館にもキャラクターがある。以下は非公式、私流の図書館ガイド。

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最近なじみになった国立国会図書館関西館、ひとことで言うなら巨大な書庫である。東京の本館だけで収蔵しきれない資料の容れ物として今後とも拡張の予定らしい 。100名程度の職員が勤務しているとのことだが、平日の一時点をとれば在館する利用者よりも職員のほうが多いと思われる。

では、利用者にとってのメリットがないのかと言えば、決してそんなことはない。東京との間で毎日資料を輸送しているので、閲覧の予約をすれば大概のものは取り寄せてもらえるので、じっくり調べ物をするインフラが整っている。資料持ち込み不可でもPCはOKなので、執筆作業にはとてもいい。広い閲覧スペースは空いているから静かな環境で集中できる。

さらに、ここには研究室がいくつか設けられており、カウンターで申し込めば利用可能だ。検索用のPC、広いデスク、ミーティング用のテーブルまであり、ちょっとした企業の役員室のよう。ただ申込時に研究テーマ、利用する資料などの記載が求められる。例えば、このホームページを執筆するなら、「ジュゼッペ・ヴェルディの日本未上演作品について」とかにして、"The New Grove Dictionary of Opera"あたりを開架から持ち込めばいい。

アクセスはバスかクルマになるが、駐車場は無料、最近は周りに研究施設も建ち並び量販店や飲食店も出来ている。図書館4階にはカフェテリアもあり、400円程度のお弁当もある。カフェテリアの横には喫煙室も設けられている。その気になればここで一日過ごせる。有り難い施設だ。

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さて、次は奈良県立図書情報館、こちらも比較的新しい立派な施設だ。名前に惑わされて、しばらくの間、建物の前を通っていても、ここが図書館と気付かなかった。"情報"という余計な言葉が入っているせいだ。ただ、その言葉があるだけに、コンピュータ関係の書籍や機器は充実している。WindowsもMacも最近システムが一新され、自由に使える大型モニタのPCが多数並んでいる。私は普段Windowsを使っていないので、どうしても必要な際にはこちらのマシンのご厄介になる。もちろんPC持ち込みも可能だし、USBでのデータの受け渡しも出来る。

ここはアクセスが不便なので、利用者はそれほど多くない。一人用の閲覧机はPCでの作業や読書、書類作成など、とても使い勝手がいい。ところが、座席はたくさんあるのに、満席になるのは試験シーズンの週末ぐらいだろう。難点はクルマで行くと駐車料金が1時間100円かかるということだ。最初の1時間は無料だが、長居すると料金が嵩む。私もそうだが1時間ごとにクルマを出し入れする常連が多い。これは何とかしてほしいものだ。しかし、時間延長や無料化を望む多数の声があるにも拘わらず、図書館側の対応は鈍い。いつもガラガラの駐車場が一杯になるのは図書館の前を流れる佐保川の花見と、図書館が主催する落語やコンサートのイベントがあるときぐらいなのに、これはどう見てもおかしい。要望に対する書面回答を求めているが、ひと月以上経過しているのに未だ返事はない。

奈良県立図書情報館の書籍購入や蔵書にはちょっと左寄りの傾向が窺える。それはそれで特徴ということだが、右寄りのものの忌避という色彩が強くなると、バランス面でどうなのかとも思う。公共施設としては難しいところだろう。

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大阪府立図書館は東大阪の荒本の中央図書館と中之島図書館とがある。中央図書館は地下鉄が乗り入れる近鉄けいはんな線荒本駅の近く、伯母が入居している介護施設もほど近いので、3週間に一度ぐらいのペースで訪れる。3週間というのは、ここの貸出期間で、予約がなければ延長可能で1か月半借りられる。2週間までという図書館が多いなか、これは利用者には有り難い。しかも最大12冊というのもいい。隣接府県の住民であれば借りられるというのも、大阪府ならではの寛容さだ。

中之島図書館は近くに勤務していたときよく利用した。大阪市役所の隣、中之島公園の一角にある古い建物だ。歴史的建造物を改修しているのは大阪府庁と同じパターンだ。以前は夏場になると閲覧室の臭いが気になることが多く、1階入口の洗面所で行水している利用者がいたりして、ちょっと引いてしまうことがあった。新聞、雑誌、小説などの一般書籍を中央図書館に集約し、中之島図書館はビジネス支援、大阪資料・古典籍を専らとするリファリンス機能に特化したことで、ホームレスのような人たちを見かけることがなくなった。図書館としてはそれでいいのだろうが、大阪らしい懐の深さが希薄になったような気もする。

私は本を借りるなら大阪府立中央図書館か、奈良県立図書情報館がほとんどだ。どちらも新刊書の受け入れが早い。新聞の書評で見て読んでみようと思っても、予約がすでに相当入っていてなかなか順番が回ってこないのは痛し痒しというところだ。

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大阪市立中央図書館は地下鉄西長堀駅に直結していてアクセスがいい。ただ、都心とは言い難い場所、勤め人が立ち寄るにはやや不便で、地域住民の利用度が高いようだ。ここは一般的な書籍やCDなどの傷みが気になる。AVブースでは市内のリタイア組のような人たちが時間つぶしをしているも目につく。図書館の方針とかは関係なく、利用者側の娯楽指向が強いということか。いまは勤務地と離れているので、利用することがなくなった。

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奈良市立図書館は、近鉄高の原駅に隣接する分館、北部図書館を利用することが多い。ここは分館の中では新しく、利用者の質もあってか蔵書の傷みは少ない。府立や県立で貸出中や予約待ちの書籍でも、ここなら早く借りることができたりするため利用価値がある。どこの図書館でもネットでの蔵書検索や予約ができるが、奈良市立図書館はサーバーが脆弱なのかレスポンスに少し問題がある。本来の機能とは関係ないが、北部図書館の駐車場にはアルミ缶、ペットボトル、飲料紙パック、食品トレーなどの回収コーナーがあるので、本を借りるついでにゴミ捨てもできる。

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京都市図書館は、京都市内で働いていたときに利用者登録した。市内に20箇所ぐらいあるのだが、駅から離れた場所が多くて利便性が低い。余所者よりも地域住民へのサービスというポリシーが貫かれているのも京都らしいところ。京都市立図書館には余所では置いていないような珍しいオペラの映像資料などがあり、京都と縁がなくなって借りる機会がないのが残念だ。

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年金世代になって自由な時間もでき、これまで以上に図書館を利用している。長いあいだ少なくない税金を払ってきたのだし、各図書館を有り難く利用させていただいても罰はあたらないだろうと思っている。

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