不動山の巨石を観る
2016/6/26

うちのカミサンは何故か石段好き。テレビで古刹などの長い石段が映ると「登りたい」と言うのだから。最近もお寺ではないが和歌山の橋本にある不動山の巨石の石段に興味津々。「それじゃ、休みの日に行ってみるか」となる。

ちょうど梅雨の晴れ間となった日曜日、クルマを走らせる。五條まで無料の京奈和道を行く。御所南と五條北の間、かつて和歌山線が北宇智駅をスイッチバックで越えていた部分が未開通だが工事は進んでいる。繋がって有料になるぐらいなら、このままでもいいのにと勝手なことを思う。

南海高野線が大阪から和歌山に抜けるところが紀見峠、そこから長い尾根が金剛山まで続いている。これを金剛山南尾根という。いまどきはダイヤモンドトレール(略称ダイトレ)なんて言い方をされるが、金剛山南尾根はその一部だ。ここは山岳会などが夏山合宿に備えたボッカ訓練をよくやるところ。熱中症なんて言葉がなかった頃、高校時代に千早峠までで途中終了したという記憶がある。今回の目的地、不動山は金剛山南尾根からさらに南に派生する尾根にある。麓の杉尾という集落が登り口になる。

お寺の奥から階段が始まる。踊り場もなく一直線に駆け上がる階段は635段だそうだ。登りはいいにしても降りは危険なほどの傾斜だ。見上げると、ちょっと引いてしまいそう。いちおう手摺りは付いている。なければ危ないだろう。足に来そうで草臥れるが効率はいい。麓の村がみるみる眼下となる。大した時間もかからず巨石のところに到着。

ここは、環境省が選定した「残したい"日本の音風景100選"」のひとつだそうだ。何かと言うと、直径20cm、深さ20cmほどの穴のあいた岩があり、そこに耳をあてると紀ノ川の音が聞こえるのだとか。「ローマの休日」に出てきたBocca della Veritàみたいに手を突っ込むと抜けなくなるなんてほうが愉快だが、それじゃ環境省じゃなくて総務省消防庁の所管になってしまう。

しかし、環境省も妙なものを選定する。各都道府県から万遍なく選んでいるあたりがお役所らしい。そして、"音"だけではなく、「かおり風景100選」なんてのもあって、大阪からは鶴橋駅の焼肉のかおりが選ばれているのには笑える。確かにあれは超個性的だけど。

それで、紀ノ川の音がするのかどうかだが、確かに何か音がしている。空洞にかすかに響く風の音のような気もするし、地下水脈の音が伝わっているのかも知れない。この穴が自然のものなのか加工物なのかは判然としない。飛鳥一帯にある人の手が加わった巨石と同列でないのは確かだ。尾根上に突然大きな石がゴロゴロと転がっていて、ヘンな音がする穴もあるとなると往古の信仰の対象になるのは頷ける。

ここから尾根道を辿れば金剛山南尾根の行者杉に至る。1時間ほどの道のりだが暑いだけで面白くもない山道だろうし引き返す。よくしたもので回り道が設けられていて、こちらは普通のジグザグの登山道、墜落の心配はない。真っ直ぐ降りると、それこそ総務省消防庁のご厄介になりかねない。

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