半世紀ぶりの伯耆大山+美作三湯制覇
2016/7/30

「伯耆の大山に日帰りで行けるか調べてみました。行けますね。朝5時過ぎの始発に乗って、岡山から高速バスで米子へ。米子からは路線バスに乗り換え、登山口の大山寺には10時過ぎに着きます」というのは玉野に単身赴任中のS君から来たメール。
 要するにこれはお誘いだな、クルマの機動力も欲しいということだろう。それじゃ行ってみるか。大山は大昔に登った山だし、そのあと麓でスキーしたこともあるから一人で再訪という気にもならないので、まあいいか。帰りに湯原温泉で汗を流せば美作三湯も全部浸かることになる。

那岐山に登ったときと同じく津山駅で待ち合わせ、ただ今回は1時間ほど早い。4時過ぎには自宅を出る。院庄インターから中国道、米子道に分かれて溝口インターが大山の最寄りとなる。登山基地の大山寺には9時過ぎに到着。スキーシーズンは駐車場が有料だが、夏場は無料、これは除雪などの整備のコストが反映されているのだろうか。ともかく、タダとは結構なこと。

初めて大山に登ったのは高校生のときかと思うが、あの頃の大山と今の大山じゃ全く違う。昔は登山コースが複数あったのに、今では夏山登山コースが一本だけ。稜線の崩落で最高峰までの縦走は禁止されているし、西の山麓の桝水原からの直登ルートも地図から消えている。ということは、一本道を登って降りるだけ。

これだけ人の多い山登りなんて久しぶりだ。小学生の団体が何隊かに分かれて登って行くかと思えば、同じ年頃の子供たちが稽古着を着て登っていく。こちらは空手道場の山登り修行か。片や広島県福山市、片や兵庫県加西市、団体登山に好適ということなんだろう。コースは一本で危険もないし、3時間あまりで頂上に立てる。関西での大峰山みたいなものか。洞川から出発して、男の子は山上ヶ岳、女の子は稲村ヶ岳というのが定番になっているのと同じだ。

日本百名山に入れられてしまったので、急登が続く登山道も傷みがち。階段状に土留めが施されているのは致し方ないにしても、小学生には段差が大きすぎる気がする。それに、暑い。嫌と言うほど汗が出るので、水分補給が追いつかない。その中でひたすら3時間登るのは鍛錬にはなっても、混雑した山道では正直楽しいとは言い難い。最初は見えていた米子の街から弓ヶ浜あたりも、登るにつれて眺望は得られなくなる。

9合目あたりからは木道になる。お花畑や大山きゃらぼくの植生保護だろう。大台ヶ原の頂上と同じ、四国の剣山もこんなだった。登山客が百座に集中するというのは困ったものだ。
 あれだけ沢山登っているのだから頂上も賑やかだ。直下の避難小屋あたりが広くなっているので溢れるということはないが、てっぺんは足の踏み場もないほど。空手道場の子供たちで埋まっている。小学生団体ももうすぐ来るぞ。三角点のある弥山頂上から東の最高峰剣ヶ峰方面へは立入禁止の看板がでている。むかし歩いたときも稜線は幅1mもない箇所があったが、今ならナイフリッジ化しているはず。北側、南側、どちらに落ちても痛いだけでは済まないだろう。

禁止となると行ってみたい登山者は必ずいるもので、YouTubeにはそういう動画もある。自己責任とはいえ進退窮まったら救助要請になるだろう。誰でも登る名山だけに、ちょっとした冒険心が大事になるリスクが高いとも言える。もちろんオジサン二人はそんな無茶はしない。避難小屋の前で昼飯を食べたら下山にかかる。

山頂付近だけ回遊ルートがある。ちょっと下って夏山登山ルートには少し登り返すので人の姿は少ない。やっと山登りという感じになる。登山道の脇の花に目をやる気分にもなる。大正期に作られたという石室を過ぎてあとは延々と下る。登り3時間、下りは2時間と少し。阿弥陀堂のところから大山寺に向かう巻き道をとる。僧兵コースという名前が付いている。沢筋に降りたところは南光河原、往き帰りの行程で初めて流れに出合う。汗まみれのタオルを冷たい水に浸して顔に当てると、やっと夏山だなあという思い。真っ直ぐ元の道を下ったらこれはない。

南光河原を渡った先はもう大山寺本堂、賽銭を入れて鐘楼で一突き、無事下山の御礼かな。参拝者は長い参道を登ってここに至ることになる。途中の三門には300円の参拝料を申し受けるようになっていたが、逆コースの場合はどうなんだろう。裏口無料参拝はこれが三度目になる。東の巻向山から大神神社御神体に登ったとき、北の御破裂山から談山神社に至ったとき、それと今回は南から大山寺へ。まあ、神社仏閣も登山者を想定していないだろうから、いいか。

満杯だった広い駐車場も車の数がだいぶ減っている。汗まみれの体を早く湯に浸したい。大山環状道路から蒜山方面へ一般道を行く。湯原湖の北側を回り湯原温泉に向かう。浴衣姿の人が行き交う川沿いの道をどん詰まりまで進み河原の駐車場にスペースを見つける。無料露天風呂の砂湯はさらに上流のダムの下だ。
 川面から湯気が立ち上っている先には裸の人影が見える。ほう、これは開放的、さすがに陽のある時間、大胆な女性の姿は見かけないが、野郎どもでけっこう賑わっている。タオル、石鹸は御法度なので浸かるだけだが、これはさっぱりする。熱めの極楽湯を頭から浴びればそれで十分だ。
 砂湯の入口には露天風呂番付なる立派な看板がある。それによると、東の横綱が群馬県の宝川温泉、そして西の横綱がこの岡山県の湯原温泉となっている。私見では絶景の鹿児島県たまて箱温泉が筆頭だと思うが、由緒や歴史を加味すればこうなるのかも。いずれにせよ、湯原の三役は揺るがないところだろう。これで美作三湯は完全制覇。

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