予備日にテッちゃん 〜 城端線・氷見線・万葉線
2016/8/28

薬師岳から立山室堂まで、3泊4日の山歩きを終え富山に下りてきた。途中の悪天を見込んで予備日を1日設けていたが、それも使わずに済んだ。折角だから、その日はテッちゃんに充てる。福光で宿泊、城端線、氷見線に乗ろういう企てだ。

新高岡という新幹線との乗換駅があるのに、城端線は1時間に1本のローカル線、福光から高岡へ向かう列車の前に反対方向の城端行きが来る。迷わずそれで終点へ。そこから折り返しをする。散居村(散村を富山ではこう言うらしい)の砺波平野を高岡へ。ここで荷物をコインロッカーに放り込んで、氷見行きの列車に乗り継ぐ。

実は、氷見線は去年の暮れに青春18きっぷで往復している。ただ、天気も悪く明け方のことで景色どころではなかった。今回は雨晴から氷見にかけて、富山湾越しの立山連峰が何とか望める。車内ポスターのような冬場ではないから、いまひとつクリアではないが、劒岳から連なる岩稜のギザギザも確認できる。三ノ窓、小窓、大窓とギャップが続くから判りやすい。昨日まで歩いてきた立山より南の稜線は雲に隠れている。

氷見に着いたらとりあえず、観光案内所で地図をもらってと入っていくと、係のオジサンはいきなりパンレットと地図を押しつけ、バスがすぐに出るよと指さす。番屋街行きとということで、氷見観光の定番のよう。運賃100円と安い。じゃあ、行ってみるか。
 ここは夏休み最後の日曜日で賑わっている。展望台に上り、土産を買って、市場で適当に海産物を見つくろってオープンスペースで昼ご飯、もちろんビール付き。

さて、氷見から普通に戻っては面白くない。途中の伏木で下車、小矢部川の河口にかかる万葉大橋を対岸に渡り、万葉線の中伏木駅へ。そこから高岡までライトレールに乗ろうと考えた。
 伏木駅に降り立つと、先ず案内表示にびっくりしてしまう。ふだん近鉄に乗っていて簡体字、繁体字、ハングルあたりなら珍しくないが、何とこの駅にはキリル文字の表示がある。こいつは初めてお目にかかった。後で知ったが、かつて、伏木・ウラジオストク間に定期航路があったらしい。それでロシア語か。

駅員さんに尋ねてみる。
「小矢部川の橋を向こう岸に渡って、中伏木駅から万葉線に乗ろうと思うんですけど、どう歩いて行けばいいですかねえ」
「歩きの近道があるかも知れませんが、普段はクルマで通るから、ちょっとはっきりとは…」
 まあ、そんなものだろう。ごく近くに住んでいる人でないと判らないもの。スマホの地図を頼りにチャレンジ、教えてもらったクルマの道とは反対方向に歩き出す。

地図でははっきり判らなかったが、歩く人のショートカットがあった。それを辿って橋の上に出る。万葉大橋という名前が付いている。なぜ「万葉」、これも知らなかったことで、万葉歌人の大友家持がこの地に赴任していて、ここで多くの歌を詠んだということのよう。彼は高級官僚の転勤族だったんだ。昔、越中の国の国府は伏木というのも知らなかった。つまり県庁は富山市ではなく高岡市にあったということだ。
 万葉大橋の歩道には家持の歌碑がいくつかおかれている。「玉くしげ二上山に鳴く鳥の声の恋しき時は来にけり」という歌があり、あれっ、なんで大和の歌がこんなところにと思ったのも誤解だった。伏木にも大和と同じく二上山という山があるのだ。

伏木港にはこれまた万葉埠頭があり大型船の停泊が可能、クルーズの寄港地になっていて、この日たまたま停泊していたのが飛鳥Ⅱという豪華客船だった。これは大学時代のクラブの同期が長﨑で設計に関わったクリスタルハーモニーじゃないか。こんなところでまみえるとは奇遇。豪華客船ともなれば大きさが半端じゃない。伏木の低層の家屋の向こうに、まるで大きなビルが建っているように見える。早い話、ホテルが動いているようなものなんだろう。どうりで、氷見線や雨晴海岸に外人の姿がやたら目についたのは寄港地でのエクスカーションということなんだろう。

万葉大橋は小矢部川を斜めに横切るので川幅よりもだいぶ長くなる。こちらの袂にも中伏木駅方面への歩く近道がある。このあたりの万葉線は専用軌道で、道路沿いにかわいい駅舎がある。川を挟んで並走する氷見線と違ってこちらは1時間に4本ものフリークエントサービスなのは驚き。そして更に驚き、先にやって来た反対方向の越ノ潟行き、何と、ドラえもんトラムだ。真新しいピカピカの2両連結の青い車体、フロントにはイラストがあり、運転席の横にはドラえもんが乗っかっている。このトラム乗車を目当てに子供連れがやって来るのだろう。氷見線には忍者ハットリ君車両が走っているし、ご当地出身の漫画家にあやかってということか。

こちらの乗車する高岡行きは赤いトラムだった。これが主力車両のよう。専用軌道はすぐに終わり、路面電車になるとスピードは落ちる。伏木から高岡まで氷見線の途中駅の数2つに対し、万葉線は15もある。週末は落語家の立川志の輔の車内放送が流れるが、次々に停留所となるので喋りづめの様相。この人は万葉線終点の新湊市(現在の射水市)出身ということで、地元振興に一肌脱いでいるようだ。速さで言えば氷見線、地元の足なら万葉線、「どっちが便利か、ガッテンしていただけましたでしょうか」とのアナウンスはなかったけど。

万葉線は高岡駅構内に乗り入れているので、JRや新幹線開通後に第3セクターとなった在来線との乗り換えも便利になっている。惜しむらくは、少し南の新高岡駅まで延伸すれば新幹線からのアクセスが格段に便利になるのに。まあ、それは旅行者の観点で、地元の人は新幹線に乗るときはクルマで新高岡駅に向かうのだろう。
 北陸新幹線の駅が高岡でなく新高岡というのは、地元にとって痛恨のことだろうし、旅行者にとっても不便だ。JR西日本のサイトで予約した帰りの金沢乗り継ぎの乗車券・特急券の発券が高岡駅ではできない。高岡から新高岡までの一駅分の切符を別に買って、新高岡駅で発券というのは信じられない。ローカル線とはいえ城端線、氷見線という路線があるのに、この駅はJR西日本の主要駅に位置づけられていないということなのか。おかしなことだ。
 富山駅でも旧岩瀬浜線の富山ライトレールが駅南の富山地鉄の市内線に乗り入れるという話があったのに、新幹線が開通してもまだ実現していない。富山県人はのんびりしているのだろうか。これでは美味しいところはみんな金沢にもって行かれてしまうぞ。北陸の中心は金沢ではなく富山だと思っているのに、ここで褌を締め直してがんばってもらわねば。

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