春鹿酒蔵まつり、再び
2016/9/18

近鉄奈良駅の近くで働いているカミサンがチラシを貰ってきてくれた。年に一度の春鹿酒蔵まつりだ。9月18日、まてよ、この日は午後に京都でコンサートを聴く予定だ。でも、大丈夫、ささっと呑んで屋台で何か食べて行けば余裕で間に合うぞ。台風も近づいていて天候は怪しいが、テントぐらいあるだろう。

春鹿の酒蔵は近鉄奈良駅から歩くと20分近くかかる。駅のインフォメーションで「福智院町まで行く100円バスがありましたかな」と窓口のおばさんに尋ねる。ところが、どっこい、福智院町と言ってもピンと来ない様子、まあ観光客なら名所への行き方を尋ねることはあっても細かな地名を口にしないし、これでいいのかも知れないが少し淋しい気もする。なかなかロンドンのタクシーのようにはいかない。

10時オープンで30分ほど遅れて到着すると、隣の今西家書院のところまで列が伸びている。あらあら、世に酒飲みは多い。ここ奈良は清酒発祥の地でもある。ところが、何のことはない、これは限定酒などの販売の列なのだ。受付の横には限定純米酒のプラコップがふんだんに並んでいる。さっそく、一杯、二杯。ああ甘露。

このイベントに来るのは二度目、初めて来たときは倉庫いっぱいに設えられた即席のテーブルで、大勢が立ち呑みしていて度肝を抜かれた。二度目ともなると要領は心得たもの、テーブルは既に尻の長そうな左党で満杯だけど、屋台で買ったチヂミを当てに、本当の立ち呑み、立ち食いだ。
 半分近く、いやそれ以上が女性ではなかろうか。有料の飲み比べセットの大きめのカップを五つ並べた剛の者も一人や二人じゃない。カップル、家族連れの姿も多く、キッズスペースまであるぞ。親は子供が遊ぶ姿を見ながら聞こし召すという具合で、ここの酒蔵まつりの雰囲気は健全なものだ。古い奈良の中心という場所柄もあるのだろう。

何だかんだと10杯ぐらい頂戴すると、すっかりほろ酔い気分。仕上げは三輪山勝素麺の屋台でうどん、ここのブランド名は一筋縄といって、最近はかなりメジャーになってきている。この夏にセールがあって、10kg入り箱を買ったら3000円の商品券が当たり、木曜日に桜井まで使いに行ったばかりの店だ。酒蔵まつりの客は倉庫でメートルを上げている最中で、この店の屋台は閑散としている。手持ち無沙汰のおねえさんとお話する。
「まだ、みんな中で呑んでますからねえ。ひとしきり出来上がったら、最後の仕上げに食べに来るんとちゃいますかね。この前で立ち食いしてひとつ客寄せしまひょか」
 そんなことを言ってテントの前でいただく。すると、次々と呑み終わった客が来るではないか。急に店が繁盛し出した。まるでオヤジ招き猫だ。

酔っ払うほど呑んではいないが、JR奈良駅まで酔い覚ましの散歩、ならまち界隈は古民家改造の新しい店がだいぶ増えている。街歩きの観光客の姿も多い。この人たちは春鹿酒蔵まつりのことは知らないんだろうなあ。

世界遺産元興寺の前を過ぎ、猿沢池の畔、ならまちセンターの前を通ったら、いま開催されている「第4回なら国際映画祭」の飾り付けが目についた。そうか、2年に一度のイベントが始まっているのか。三条通の商店街では「奈良市には映画館が一つもないのに、映画祭があるなんて…」というような自虐的キャッチコピーのアナウンスが流れていて、これには笑ってしまった。地元の人間にさえ認知度が低いのは、いかにも自己PR下手の奈良らしい。
 時を同じくして「春日野音楽祭」というイベントも市内随所で開催されているのに、こっちも歩いてみて初めて知る始末だ。世界遺産がゴロゴロあって、祭やコンサートや展覧会やらも少なくないのに、奈良はみんなバラバラだ。一つのコンセプトに糾合してアピールする工夫はないのだろうか。行政に知恵者がいればやりようもあるのにと歯がゆい思いがする。これじゃリニアも京都に行ってしまうぞ。
 もっともリニアに否定的な自分としてはどうでもいいことだし、新幹線の駅も空港もない奈良ののんびりしたところが好きなんだけど。

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