明神山 〜 亀の瀬 opposite side
2016/10/6

ひと月前、亀の瀬のハイキングに行ったとき、かつての地滑りは大和川の河床を埋め、対岸の明神山の斜面にまで達したとの説明があった。見上げる向こう岸の山は大和川に向かってかなりの急斜面だ。東の奈良県側は緩やかになっているので、紀泉国境から続く金剛山の山系が大和川で断ち切られる端っこの山ということになる。地形図的には眺めが良さそうだし、一度登って観る価値はありそう。予想より早く通り過ぎた台風のあとの晴天、さっそく出かけてみる。

明神山の東からハイキングコースがあるらしい。このあたり、JR関西線の王寺駅が最寄りということになる。王寺はJR和歌山線、近鉄生駒線、近鉄田原本線が集まる交通の要衝で古い街だ。駅からちょっと離れた明神山の緩斜面に宅地が開発されていて、明神何丁目とかの地名になっている。昭和の終わりごろだと思う。このあたりにマイホームを購入した会社の同僚もいたはずだ。
 その住宅地の真ん中にある広い明神山駐車場は近くのスーパーの駐車場を兼ねている。どちらかといえば後者のためのものか。しかし、登山用とする看板も並んでいるから、地元も明神山を大事にしているということだろう。

鳥居を潜った先にも住宅地が続くのは奇妙な感じだ。戸建ての塀には明神山参詣道の石柱があったりするので、住宅地の街路がハイキングコースを兼ねるあたり六甲山とよく似ている。もともとは参詣道で後から住宅ができるとこうなるのだろう。
 その背景はハイキングコースにあった説明板で解った。もともとは麓の村の信仰の対象であった明神山、その山頂の水神社への谷沿いの山道が傷んでいたところに宅地開発の話、開発業者の全額負担で尾根筋を通すコンクリート舗装の参詣道ができるに至ったらしい。なるほどねえ。

東京の高尾山の参道みたいな感じだ。誰でも気軽に登れる適度な傾斜の舗装道、駐車場から小一時間というところか。近所の人だろう、散歩がてらに登っている人に何人もすれ違う。この程度なら暇さえあれば日課にすることも可能だろう。犬の散歩にもいいかも知れない。もっとも、イノシシ注意だとか、マムシ注意だとかの看板は随所にあるけど。

頂上の近くになると、北側、大和川の方向が開ける。亀の瀬の地滑り地帯が一望だ。対岸から俯瞰すると、幅も長さも1kmほどの山腹が滑り落ちたというのがよく解る。大和盆地からの水の出口という場所が場所だけに、これは大変なことだ。

山頂からの眺めは見事だ。標高にしてわずか274m、それなのに金剛山や大和葛城山からの展望を凌ぐ。あちらはこの4倍ぐらいの高さなのに。こんな山だとは全く知らなかった。大阪平野の眺めと奈良盆地の眺めを360°にわたり一地点で得られる場所は多くない。王寺町が整備に力を入れているのも解る。ごく近くの人を除けば、大阪や奈良の人間にもほとんど知られていないと思う。

西は大阪平野から神戸、その先の淡路島や明石海峡大橋まで、東は奈良から飛鳥まで大和盆地を一望、盆地に浮かぶ大和三山や遠くの高見山まで。台風一過のクリアな空気のせいもあるだろうけど、これはこれは。よくしたもので、山頂には三方向に展望デッキが設けられている。

奈良盆地の眺め (ダブルクリックすると拡大しスクロール、クリックでもとに戻る)

西や東の眺めに気を取られてしまうので、南の大和葛城山、金剛山は分が悪い。山頂のデッキに設置された"無料"の望遠鏡が睨んでいるのも東と西だ。それで西側のデッキはただいま工事中、奈良県立王寺工業高等学校の生徒が製作する「悠久の鐘」を設置し、鐘を設置するデッキやリングは、奈良芸術短期大学の学生がデザインするのだそうだ。
 ところが、その突き出したデッキの設計変更に伴う工事遅延の旨が告知されている。最初はあべのハルカスに向いていたのが、明石海峡大橋の方向に変わるのだとか。当初の計画に対して瀬戸内海に沈む夕陽の方向がベターとの地元の意見に従ったとの由。所詮は税金が原資、これも小さな自治体だから小回りが利くということかな。

山頂だから地形図に示されている三角点があるはず。祠があるのがそこかと思ったが、どうも標石が見当たらない。おかしいなあと、足許に目をやると、あった。こんな三角点、見たことない。排水溝の蓋のようなコンクリートに「三等三角点」のプレートが。よっこらしょと持ち上げてみるとその中に+マークが刻まれた三角点の頭が見えた。何だ、こりゃ。

面白いものがあるものだ。その三角点の横の木には手作り標識がいくつかぶら下がっているのにも気がついた。あれっ、「西山」と書かれた古そうな山名標があるぞ。これは、明神山の別名か旧名か、「三」は「参」だし、「点」は「點」、そんな表記も時代を感じさせるが、はて。明神山の説明の看板にもそれらしいことは書いていなかったので、何とも不思議だ。

奈良に住んでいても知らなかった絶景の山、家から近い交野山と遜色ない眺め、低山侮るべからずである。

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