長浜曳山を見る 〜 日本の祭り in ながはま 2016
2016/10/30
「長浜までどのぐらいかかる?」と、カミサンが聞く。
「そうやなあ、車で3時間はかからんと思うけど。何かあるの?」
10月の終わりにお祭りがあるそうな、それが「日本の祭り in ながはま 2016」、正式名称は地域伝統芸能全国大会「地域伝統による豊かなまちづくり大会ながはま」というものらしい。何かよくわからないまま、月末の日曜日、車を走らせる。京田辺から宇治田原を抜けて南郷インターから高速道に入る。これがわが家からの直線ルートに近い。長浜まで2時間と少しだった。帰りには渋滞があるだろうけど。
長浜駅のだいぶ手前に規制線が設けられている。その先は会場まで歩くことに。係の人に尋ねたら親切に無料の駐車場を教えてくれる。
このイベント、週末の二日間で各地の祭が披露されるようだ。有名どころでは、小倉祇園太鼓、河内音頭、山形花笠まつり、阿波おどり、安来節といった名前が並ぶ。ご当地の長浜はというと、通常4月に開催される曳山が特別開催のようだ。黒壁スクエアのほうに向かって歩いて行くと、路上に山が見えてきた。
この山は祇園祭のものとはだいぶ違う。正面に四畳半ぐらいの舞台が付いている。ここで子供の歌舞伎が演じられるという。曳山博物館に入って、展示を眺めていると長浜の曳山のことが判ってきた。
館内には四つの山が展示されていて、それぞれの町内の顔役の人だろう、いろいろと説明してくれる。
「パネルに一山2億円ぐらいと書いてありましたが、そんなもんですか」
「いやあ、もっとかかりますわ。裏にかかっている織物なんて、それだけで川島さんにいま頼んだら億単位ですわ」
「へえー、そうですか。お金のかかることですねえ」
「ここらの町会費は月3000円ですわ」
「もうすぐ決まると思いますけど、国内の33の山・鉾・屋台が一緒に世界遺産になると思います」
「ああ、そんな展示がありますね。あれを見ると近畿では京都と長浜だけで、間の大津が抜けてますけど、あそこにも立派な山がありますよね」
「そうです。この33というのは、国の無形文化財になっいてるものという線引きなんで、大津は最近そうなりましたが、申請のときには間に合わなかったんですよ」
「なるほど、そういうことでしたか。出遅れてしまったんですね。祇園祭はくそ暑いし、人だらけで見るのも大変だし、その点で大津祭は時候もいいし、山を見せてヘンに金を取ったりしないし、山自体も下京のものに引けをとらないと思うんですけどね。紀伊山地の霊場と参詣道みたいに追加登録かなあ」
曳山博物館の展示は興味深く、関係者から裏話もたくさん聞いて、思いのほか時間を費やした。外に出ると、前の広場では演し物が終わったところだ。次の山、萬歳樓と交替して公演が始まるのは14:30だ。それまで、ちょっと街歩き、観光客目当ての店には目もくれず、カミサンは古い油屋で濃厚なごま油を買っている。近くの長浜別院にも行ってみる。これはずいぶん大きなお寺だ。
さて、そろそろ始まるぞ。4月の本来の祭のときには先ず長浜八幡宮に奉納した後、それぞれの町での公演が続くらしいが、今回は特別公演、四つの山が春のものを再演するということだ。子供狂言を行うのは12の山で、毎年4つということは3年で一巡するようだ。すると、演じる子供たちは3年かけて仕上げるということになる。遊びざかりの小学生、学校の宿題もあるだろうし、世話をする大人ともども、これは大変なことだ。ぞろぞろと山や鉾を引いて回ったり、やんちゃものが荒っぽく引き回すような祭とは訳が違う。
そして、「傾城阿波の鳴門 どんどろ大師の場」を鑑賞。いやあ、子供たちの名役者振りにはいたく感心、周りの町内の大人の拍手のタイミングも絶妙だ。舞台に立つ彼らは、勉強ができる子、スポーツが得意な子よりも、きっとここ長浜ではスターなんだろう。見とれてしまって時間の経つのを忘れる。それで、日本の祭りはどうなった。何のことはない、その頃にはとっくに二日間のパフォーマンスは終わってしまっていた。