福知山線廃線敷を行く
2016/12/1

前日にテレビを見ていたら、生瀬・武田尾間の福知山線旧軌道跡をレポートしていた。あれっ、整備が完了して歩けるようになったんだ。週末になると人がいっぱいになりそうだから、さっそく出かけてみるか。

西に向かうはずなのに、東行する電車に乗る。今日は青春18きっぷの発売日、いつも赤きっぷを買うJR奈良線玉水駅を経由して行こう。ところが、その玉水駅で改札越しに民間委託の駅員さんに声をかけたら、思いもよらぬ返事が。
「もう沿線全部で売り切れですわ。徹夜組もいましてねえ。販売枚数も少ないし、こんな時間じゃ、もうあきまへんわ」
 何ということ、夏に買い損ねたときは、発売後何日か経過していたので仕方ないにしても、使用期間の短い冬なら大丈夫と駅員さんは言っていたし、まだ朝のうちなのに。
 後から知ったことで、この赤い青春18きっぷ(常備券という)は、今回をもって販売終了になるらしい。なるほど、それでテッちゃんが大挙して押し寄せたのか。何しろJR奈良線は全国でも珍しい赤きっぷの宝庫、玉水駅だけでなく山城青谷駅とか長池駅とか販売駅が目白押しなのだ。

無駄足になった挫折感を胸に、京都を経由し遠回りで福知山線生瀬駅に向かう。大都市近郊区間なので最短ルートを通らなくてもいいから不正乗車ではない。これで余分な運賃を払うのだったら目も当てられない。

気を取り直して生瀬駅から国道176号沿いに歩く、歩道は狭いし交通量も多く、いまいちのアプローチだ。気分のよくない歩きは20分ほど。案内板にしたがって路地を入ると廃線跡に辿り着く。ここから武田尾駅近くまで、武庫川沿いの軌道跡ハイキングコースになっている。ご丁寧に落石等による事故の責任は負いませんとのJR西日本の看板がいっぱい立っている。

レールは全て撤去されていて、枕木は残っているものと撤去されたものが半々というところ。平日だが歩く人の姿もそれなりに。狭い渓谷なのでトンネルが何か所かある。ハイキングコースになっているとはいえ、内部の照明はない。友ヶ島砲台に続いてヘッドランプの登場だ。山登り用に買ったのに、こんなことばかりに使っている。まあ、いいか。

北行するルートだと初めは右岸、途中で左岸に渡る。トンネルの先は鉄橋、その先はまたトンネルという、ここはテッちゃん興奮のスポットだ。鉄橋脇の狭い歩道の代わりにレール跡を木橋に作り替えたようだ。
 紅葉が観られるかと期待したものの、盛りは過ぎたようで、地面に散らばる葉っぱに名残りを留めるだけ。途中に親水公園があって、ここがお弁当スポットなんだろう。歩き出してすぐに駅前のコンビニ(さすが、ここでは生協)で買ったお寿司を食べてしまったので、物欲しげに現れた猫に恵んでやるものはない。

間もなく遊歩道は終わる。ゆっくり歩いたので時間はかかったが、4〜5kmといったところか。最後は舗装道路となり、武田尾駅に到着。駅は武庫川の畔というのか、ほとんどトンネルの中だ。ここも鉄橋の両側がトンネルというロケーションになる。駅の周りに人家はない。当然のことながら無人駅。それなのに、ICカード対応で、複線電化、1時間に4本ものダイヤというアンバランスさが可笑しい。駅近くのかなりの台数の駐車スペースは、大阪方面への通勤者用なのか。ここから大阪駅までは40分ほどの近さだ。渓谷沿いに人は住まないが、高台にはニュータウンが広がり、付け替えられた福知山線には西宮名塩駅が出来ている。

このまま武田尾駅を過ぎで10分ほど歩けば武田尾温泉。一風呂浴びてという考えもあったが、調べてみると紅葉舘別庭「あざれ」は日帰り入浴1800円という値段だ。ちょっともったいないので足を向けず。駅前に日帰り云々の案内看板もなく、ハイキングの客を誘致しようなんてつもりもなさそう。駅の手前に温泉があれば別の展開もあるのだろうけど。なんとも不思議な場所だ。

ここは、京都郊外の保津川と似ている。武田尾駅と保津峡駅なんて、同じような場所にある。どちらの路線も河畔に沿って走る風光明媚なルートが、トンネルで直線化された新線に付け替わった。あちらが旧線を利用してトロッコ列車を走らせたのに対し、こちらは軌道を撤去してハイキングコースとなった。一概に、ことの優劣、当否を論じたくはないが、古いものに手を加えた観光資源でガッポリ稼ごうとするのが、いかにも京都らしい。それとは対照的に、こちらは欲得尽くなしの自然体というところかなあ。

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