走る人、歩く人 〜 奈良奥山ドライブウェイで登る
2016/12/11

この季節、また奈良マラソンの日がやって来た。各地から交通費・宿泊費自腹、そのうえ多額(?)の参加料まで払って、走りにやって来る人の気が知れないが、半ば観光ということもあるのかな。もっとも、あまりお金を落とす人たちではなさそうだが。

この日は地元の山登り愛好家にとっては、年に一度の奥山ドライブウエイ無料開放の日でもある。交通規制で多少遠回りにはなるが、界隈の山歩きに出かける。前に行ったときには頂上三角点に辿り着けなかった芳山に再挑戦する。登りの山道がはっきりしない山で、ネット上の記録を参照してみても、皆さん結構苦労しているようだ。

奥山ドライブウエイと柳生街道の分岐点に車を駐める。東側から柳生街道を辿れば実は無料でここに来られるのだが、この日は堂々と料金ゲートを通過だ。前回に登り口とした石切峠を過ぎ、峠の茶屋に至る。以前は、ここに老犬がいて、茶屋も開いていたのだが、雨戸は閉ざされ人の気配はない。もう、やめたんだろうか。それとも季節営業なのか。さらに少し下って上誓多林(かみせたりん)の集落のはずれ、駐車場付きの公衆トイレの側から神社のほうに別れる道を進むことしばし、鹿か猪除けのネットフェンスの扉を開けて登りにかかる。これが芳山への登り口くさい。

道の付き方は心許ない。藪漕ぎにはならないものの、そんなに踏まれているふうはない。また、今回も迷走となるのかと尾根にあがると、そこには古い石仏が鎮座している。宝暦と読めるが年号ははっきりしない。どうもこの場所への道だったようで、山頂に向かう登山道ではなさそうだ。それでも尾根上は比較的歩きやすく、やがてこの日初めての道標が出現する。芳山と石切峠を示しているから、ようやく一般的なルートに合流したのだろう。

尾根筋には頭が黄色い石柱が何本も埋められている。奈良公園の文字があるので、西側の春日山原生林(奈良公園に含まれる)の境界標のようだ。随所に西側への立入禁止のロープが張られている。標高520mの芳山南峰、517mの芳山三角点には標石沿いに明瞭な山道がある。芳山南峰には前回も来ているのに、どうして先の芳山三角点に辿り着かなかったんだろう。あれは5月のこと、樹林や下草のようすが違うので、踏み跡を見失ったのだろうか。今回は何のことはなく三角点に到達。マラソンの日にこんな藪山に登る酔狂な人は誰もいない。

さて、下りは先の道標のところから石切峠への道をとる。果たしてどこに出るのだろう。こちらにはテープの目印もあるし、しっかりした踏み跡も付いている。途中に広めの水平道に出たところで、途切れるような感じになるので戸惑うが、柳生街道はすぐ下に見えている。テープのあるルートを降りると石切峠の少し東側の地点だった。峠の茶屋の方向に下り最初のカーブミラーのあるところから10mほどの地点、道脇の木に薄らと赤い矢印があった。なあんだ、ここだったのか。芳山の文字も何もないから、これは判りづらいや。

登りと下り、コースは違ったが芳山往復は1時間あまり、予定どおり高円山に回ることにする。ここはお盆の送り火があるところだが、若草山の山焼きほど有名じゃないし、送り火となると京都の知名度の足許にも及ばない。ドライブウエイのビュースポットに車を駐めて、高円山三角点に向かう。三角点は少し西に行ったところ、ここからは下りになるのが面白い。
 ビュースポットの一段上が高円山の最高地点で、ここには昔ホテルが建っていたらしい。今は建物は撤去されて草原の更地になっている。眺めはよくても、アクセスが有料道路しかなく、観光スポットに行くのも不便と来れば営業不振も仕方ないだろう。

ドライブウエイは無料開放を知っている地元の車がまあまあ登ってくる。何度も来ているらしいオジサンが頼みもしないのに説明してくれる。

「今日は遠いとこまで、よお見えますわ。生駒山の右手には六甲山ですやろ、その右は北摂の山やし、宝塚あたりまで見えてますわ。南のほうは、二上山の右手に堺のほうのマンションが立ってますわ」
 お構いなしに得々として喋り続けるので、「そんなん、見たらわかりますやん」なんて水を差すのも大人げないので、適当に相づちを打って頃合いを見て車に潜り込む。山ではときどきこういう人がいる。

マラソンは天理で折り返して、遅いランナーはまだ復路を走っている頃だ。高円山から白毫寺方面に下っても通行止め。下りは東に迂回して名阪国道福住インターを目指す。再び柳生街道に入る。途中の上誓多林集落の民家のガレージに立ち寄る。ここに並んでいる無人販売で黒豆の買い出しを忘れてはいけない。大粒、一袋500円はずっしりとした手応え、着々と正月準備が進む。

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