テッちゃんの絵本 〜 「世界の美しい地下鉄マップ」
2017/3/7

今どきの図書館のサービスはネットショッピング並みだ。キーワードを登録しておくと、関連する新着図書のお知らせメールが来る。"鉄道"関連で「世界の美しい地下鉄マップ」(マーク・オーブンデン著)という図書の案内が届いた。さっそく図書館に行ったら、先を越されて貸出中、世にテッちゃんは多く棲息している。

予約順位トップで回って来たこの本、奇妙なデザインのカバーだ。と、これが地下鉄路線図!ワシントンDCのものらしい。実際に使われているものではなく、候補デザインの一つだったらしいが、斬新さにびっくり。あまりにぶっ飛んだ意匠だから実用性があるとは思えないが、駅名や乗換は当然のことながら正確なもよう。こんな調子で、本書には世界166都市の地下鉄(路面電車や近郊電車も含む)路線図が収録されている。

大都市に張り巡らされた地下鉄網、それをコンパクトに示す路線図は普通の鉄道と違ってエリアに一定の枠がある。一枚の図に必要な情報を盛り込むという制約の下、いかに見た目に判りやすく綺麗に仕上げるか、まさにデザイナーの腕の見せどころと言っていい。ページをめくると飛び込んでくる色鮮やかで美しい図面に思わず溜め息が漏れる。時が経つのを忘れるほどだ。

ニューヨーク、ワシントン、ロンドン、パリ、マドリッド、ミラノ、ローマ、ウィーン、香港、私が乗ったことのある海外の地下鉄はそんなところだが、本に掲載されている166都市にとどまらず、巻末の一覧を見ると、ずいぶんたくさんの街に地下鉄が走っているのに驚く。

やはり、乗ったことのある路線に目が行く。何と言ってもしばらく住んだニューヨーク、最初にしたことはグランドセントラル駅構内の案内所でマンハッタンの地下鉄とバスの無料地図をもらうことだった。そのときの地図は掲載されておらず、クイーンズやスタテン島まで含む広域地図が収録されている。ふむふむ、毎日地下鉄を使っていたのに、未乗の路線がいっぱいだ。

さて、次はマドリッド、ここは地下鉄の乗り換えが大手町なみに大変なのと、タクシー代がとても安いので、メトロはちょっと利用しただけだった。いくつか時系列で掲載されている地図のうち、全ての路線を美しい曲線で表した地図に目が止まる。提出期限を過ぎてしまって採用されなかったらしいが、これはとっても素敵だ。

アジアに目を転じると、韓国の路線図が面白い。いくつかの都市のものが収録されているが、釜山のもののようにデフォルメ無しの地図に路線を記載したものが多い。こういうタイプ、ありそうでなかなかないのだ。
 そして、海峡を挟んだ対岸、福岡の路線図もユニークだ。ぱっと見、何の変哲もないのだが、よく見ると駅のマークがそれぞれ異なる絵文字になっている。メキシコシティなどの例を除けば、世界でもごく少ない事例らしい。
 名古屋の路線図はありきたりだが、この本のコメントが可笑しい。名城線について、「日本の地下鉄で完全な環状線はこれだけだ。東京の都営大江戸線は尻尾がついている」なんて、いかにもテッちゃんの台詞だ。その名城線で私がヘンだと思うのは、「右回り」「左回り」なんて表示やアナウンスがあること。さすが偉大な田舎、そんなこと、地元の人間で頭の中に地図が浮かぶ乗客にしか判らないのにナンセンスだなあといつも思う。まあ、山手線や大阪環状線の「外回り」「内回り」にしても五十歩百歩というところだけど。

極め付けは東京の路線図。これもいくつか掲載されている各時代の路線図の中で、目を奪われたのが近郊鉄道路線も含む一葉、まるで集積回路、こんなの見たことないぞ。ほんとに息を呑む美しさだ。著者も芸術作品の域に達していると絶賛している。全く同感。外国人デザイナーの手になるもののようで、これは市販されているのだろうか。欲しい。ほんとに東京の路線図は複雑だし、普段目にするものはデザイン的に美しいと言い難いものがある。以前には、乗換を立体的に示した地下鉄路線図があり重宝していたのだが最近は見かけない。それだけ路線が多くてデザイナーも往生するということなんだろうが、何とかならないのかなあ。もう、スマホアプリの時代なのか。とは言え、一枚の地図でないと眺める喜びは味わえない。

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