桜井の音羽山 〜 先に知っておれば
2017/5/18

本格的な年金世代となり、週に3日の仕事に就いてからは週末が週に二度あるようなもの。週末に仕事が多いカミサンと休みがあまり重ならないのはお互いのためにいいことかな。いい天気が続いている木曜日、夏山に備えた足慣らしを兼ねて、近場の山登り。出かけたのは桜井郊外の音羽山、高校生の頃に登っているはず。

奈良から吉野方面に向かうときの抜け道として利用する県道37号、聖林寺を過ぎ山間部に入ったあたり、マイカーでなければ下居のバス停から歩き出すのだが、橋を渡ってさらに南音羽の集落を目指す。たぶん集落のはずれで車をデポできるだろう。3人のおばさんハイカーを追い越し、狭い路を上がった集落のはずれに駐車スペースがあった。音羽山観音寺の参拝者用にたくさんの杖が置かれているから、ここに駐めても大丈夫だろう。そこからお寺に登る道が分かれる。
 音羽山観音寺周辺から大阪まで展望できると案内板にはあるが、はてそうだったかな。樹林の中で眺めはよくない山だったように思うが、森林を伐採したのだろうか。それはいずれ判ること。

コンクリートで固めた急な坂道が続く。道沿いにある石灯籠には音羽山観音寺まで十七丁、一丁ごとにこれがある。車を駐めた場所は七丁だったから、十丁分を歩くということか。音羽山山頂はそのずっと先だけど。

観音寺、ここは善法寺とも呼ばれるようだ。尼寺らしい。その尼さんの手作りなのか、案内の看板もいくつか立っている。「お寺でみんながまってるよー」なんてのが、山門まであと少しという地点にあった。思わず、「いやあ、お気遣いなく、まだ結構。こちとら、せいぜいゆっくり行きますわ」なんてレスポンスしそうだ。そして、本堂の前には尼さん3人、じゃなくてフィギュアだ。なんだか可笑しい。

3人のおばさんハイカーは山登りではないのか、声かけして本堂脇の住居のほうに入っていく。こちらは、お詣りを済ませて脇の登山道に向かう。すぐに二股となり、左が沢沿いの登山道、右が万葉展望台という標識、ははん、尾根沿いに伐採跡があるんだな、下山はそっちにするかと、左へとる。お寺までも急だったが、登山道もなかなかのもの、40分ぐらいで木立の中の山頂に到達、851m、盆地から眺めると東の方向に目立つ山だ。

さて、お昼、カップラーメンを食べようとコンロに火をつけたはいいが、ぼわっと炎が。あれれ、ノズルの締めがまずかったか、接続箇所から火が出ている。ハンカチでバタバタやっても消えないので、仕方ない、ラーメン用に持参した500mlの水で消火。鎮火したのはいいが、これじゃカップラーメンは無理、リュックの中にあったドライフルーツをかじり、キャラメルを舐める羽目に。こりゃあ、まさに非常食だ。

やっぱり、そうだった。頂上を少し下ったところから分かれる展望台コースは伐採跡だ。左流れの斜面が伐採されて、植林が行われている。それぞれの木にはスポンサーらしき名札が付いている。あと十年もすれば今見えている奈良盆地も隠れるかも知れない。二上山から大和葛城山、金剛山への山並み、盆地の中の畝傍山、確かに万葉展望台だ。週末なら登山者の姿もあるかも知れないが、平日のこと、お寺から上では誰にも出合わず。

観音寺から来た道を下っていると、私より少し年上とおぼしき男性に出逢う。
「まだお寺までだいぶありますかねえ」
「そうですねえ、ここまで下り5分ぐらいだったから、15分もあれば着くと思いますよ。道脇の石灯籠に十七丁のうち何丁と彫ってあるので、それが目安になりますよ」
 どうも、あまりの急坂に閉口している様子。

さらに少し下ると、今度は携帯で通話中の女性。
「この上で、主人と出逢われたと思いますけど、お寺はまだまだですよね。もうわたし歩けないと言ったんですよ」
「ゆっくり行けば着きますよ。まだお昼だし、日が暮れるわけでもないですし」
「でも、こんな急なので下りが大変でしょ。3人の尼さんにお会いしたかったのに。NHKの教育テレビで観て、是非行ってみたいと思っていたんですけど」
「テレビで何かやっていたんですか」
「とても料理がお上手な尼さんで、地元の人からもらった山菜とかで素敵な料理を創られるんですよ」
「はあ、そういうことですか」

帰ってから調べてみると、確かにEテレ、「やまと尼寺 精進日記」という番組のことらしい。単発ではなくて、季節折々に不定期放送のシリーズのようだ。今月末にも放送の予定がある。番組紹介は次のとおり、忘れなければ観てみよう。

「皐月(さつき) 見て食べて 新緑づくし」
 万葉のふるさと、奈良県・桜井市。急な山道を登ること40分の音羽山観音寺に、尼僧たち3人が暮らしている。新緑まぶしい5月は、山菜の最盛期!貴重な山ウドやウコギを、甘酢や酢味噌でさっぱり和え、素材の味を楽しむ。柏ならぬ、山に生えるサンキライの葉で包んだ餅も、この季節・観音寺ならではの味わい。里から届くのは「旬の花々」。生け花名人の住職が、シャクナゲやリキュウバイを華やかに生ける。

こんな山の中までNHKが取材に来るとはねえ。あの坂道、資材を担ぎ上げるのも一苦労だろうに。いや、NHKのことだから、おなじみの"特別の許可”をもらって、あの急なコンクリート道を四駆で運び込むのかなとは下衆の勘繰りか。

そんなことを思いつつ、国道169号を北上する。天理インターのすぐ北、中西ピーナッツでカミサンへの土産。亀田製菓どころではない、ここの柿の種は日本一なのだ。製造直販、店の中には何十種類もならんでいて、来店客が引きも切らない。カミサンの大好物の豆菓子、そして私のお気に入りのピリ辛の柿の種。

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