六甲全山縦走のほんの一部
2019/2/17

月日の経つのは疾いもので、六甲山系の最西端、塩屋から須磨アルプスを歩いたのは2011年のこと。今回はその続き、前回のゴールだった神戸電鉄鵯越駅から歩き始める。午後3時開演の兵庫県立芸術文化センターでのコンサートに間に合わせなければならないので、そんなに距離は無理だろう。せいぜい再度山あたりまでか。

西側から鵯越駅に辿り着いたときは住宅地の中を通ったが、今回、線路沿いに進む道はいきなり山道だ。水平道を進むと車道に合し、その先はまた山道という不思議な縦走コース、なにしろ六甲山系は山の斜面まで開発されているのだから、ふつうの縦走路とは訳が違う。水も食料も持たず全山縦走しても、途中のコンビニや自販機でいくらでも補給ができるのだ。ほとんど空身のトレランの人が多いのもわかる。

鳥原川と神戸電鉄の線路に沿って進むと、木の間越しにパラボラアンテナが立つ菊水山が見えてくる。500mに満たない山だけど、けっこう登りはきつそうだ。左手に駅のようなものがある。地図上には記載がない。そうか、むかし駅があったところか。立入禁止の扉を開けてホームまで上がれそうだったが、さすがにそれは止めた。複線、5分に1本ぐらいは電車が通過する。廃駅のホームをうろついていると不審者侵入ということで、乗務員から通報されてしまいそう。それにしても、何でこんなところに駅を造ったんだろう。周りに車道も人家もないし、利用するとしてもせいぜい物好きなハイキング客ぐらいだったろう。いわゆる、秘境駅。

菊水山駅は、兵庫県神戸市北区山田町下谷上字中一里山にあった神戸電鉄有馬線の駅(廃駅)である。2005年(平成17年)3月26日から営業を休止し、施設撤去費用の計上が困難で廃止せずにいたが、利用客が見込めないことから2018年(平成30年)3月23日に廃止された。   (Wikipedia)

沢筋を離れて尾根の登りに変わる。しばらく山登りをしていない身体にはきつい。週に二日は筋トレと水泳をしていても、筋肉の使い方が違うのがよくわかる。基礎体力はともかく、山登りのトレーニングは山登りに限る。
 右手にはゴルフ場が見えてくるが、何かちょっとヘンだ。プレーする人の姿が見えないし、グリーンの芝は荒れ放題、コース脇にはあちこち土砂の崩落も目に付く。これはゴルフ場の廃墟か。しかし、何台か車も駐まっているのが解せない。家に戻って調べてみたら謎が解けた。

半世紀の歴史を持つ神戸市兵庫区烏原町の菊水ゴルフクラブが、7月上旬の西日本豪雨による被害で、ショートコースの閉鎖を決めた。コース内3カ所で土砂崩れやのり面の崩壊があり、復旧が困難と判断した。敷地内にある練習場やゴルフショップ、レストラン、乗馬クラブなどは引き続き利用できる。
 同クラブは以前あったゴルフ場を引き継ぎ、1968年に開業。山あいを回る9ホールのショートコースがあり、現在の会員数は約300人。同クラブによると、神戸市内で4番目に歴史のあるゴルフ場という。ショートコースは神戸の中心地から近く、季節を感じられるロケーションや9ホールという手軽さが人気で、昨年は延べ約1万8千人が利用した。西日本豪雨で1、2番ホール脇の山の斜面が崩れ、6番ホールはコースののり面が崩壊。土砂がコースの一部に浸入し、照明設備も倒れた。1番ホールでは3年前も同様の被害があった。専門家や業者から「地質を考えると、今後も同じ被害が起きる可能性があり、完全に土砂崩れを防ぐには大きな費用がかかる」と伝えられたという。地権者らと復旧に向けて話し合いをしたが、危険性や工事費用、収益などを考え、コース閉鎖を決断。26日には会員向けの説明会を開き閉鎖を発表した。会費や預かり金は返還する予定で、コースの今後の活用は未定という。同クラブの代表取締役、北野友之さん(62)は「ショートコースの閉鎖は、愛着を持ってくれた会員や利用者に申し訳ない思いだ。寂しい気持ちもあるが、今後は山あいのロケーションを生かした利用方法を模索したい」と話した。 (村上晃宏 2018/8/28 神戸新聞NEXT)

そういうことだったんだ。ハーフコースの小さなゴルフ場だから、バブルの頃に近郊の丘陵地を潰して造成したものではなかったようだ。菊水山の頂上付近から見下ろすと、神戸の市街地から大した距離もなく、一段高くなった空地が広がるのは奇妙な眺めだ。ゴルフに興味のない私にすれば、とっとと森に戻せばいいように思うが、複雑な事情がありそうだ。

菊水山の頂上に着いた途端、雪が舞い始めたが、すぐに収まる。登りで汗ばむほどだったから寒くも何ともない。トレランの二人組が、「ここは、どこかな」なんて話している。鍋蓋山に向かうと、登ってきたトレランの女性が、「ちょっとお聞きしますが、あれは鍋蓋山なんでしょうか」と尋ねる。そっちから来たんじゃないのか、いったいどういうこと。そうか、山登りのオヤジとは人種が違うんだ。地図なんて持たないのだろう。これも六甲山ならではか。しかし、あらゆる尾根や谷筋に道がついているから、かえって地図が必要な気もするが。そんなことを思いながら、有馬街道の上を吊り橋で渡る。鍋蓋山への登り返しになる。

こちらの登りは快調だ。身体も山登りに慣れてきたんだろう。花崗岩の荒れ地に松林、ちょっと植生も違う。ちょうどお昼、開演まで3時間、ここが思案のしどころか。本来の目的はコンサートなので、遅れないようここから下山と腹を決める。最短のルートを有馬街道に向けて下りる。バスのダイヤは調べていないが国道だし1時間に1本ぐらいはあるだろう。時間は充分にある。

高座金清橋のバス停で30分あまり待つ。バスはJR神戸行だが高速神戸の近くのバス停もあるだろう。終点の手前、多聞通5丁目というのがそれか。鉄道駅の名前じゃなく町名の停留所というのも余所者には不便なことだ。まあ、京都によくある同じバス停なのに運行会社によって停留所名が違うなんてのよりはマシか。高速神戸駅は阪神と阪急が同じホームの反対側から出る。どちらも梅田行、便利といえば便利だけど、これも余所者からすれば戸惑うところだろう。いちおう、関西人なので乗り間違えなしで、阪急の特急に乗って西宮北口へ。

ジャンルのトップメニューに戻る
inserted by FC2 system