金剛山雪中登山、そのあと
2023/1/8

年末年始の長い休みが終わったばかりなのに三連休、ちょっと運動不足だし、寒波の後で金剛山にも15cmほどの積雪が残っている。久しぶりに雪中登山に出かけようかとカミサンに声をかける。パスするということなら、大阪府側の森屋から古くて長い登山道を辿るつもりだった。標高差1000m、通常の千早城跡からの道の倍はある。ところが「行く!」という返事だったので、奈良県側の高天からの最短ルートにする。ここなら自宅からクルマで1時間ほど、電車とバスで遠回りするよりずいぶんと近い。

高天彦神社からの金剛山登山道は郵便道と呼ばれている。頂上の葛木神社に配達していたのは昔の話、山頂一帯は奈良県だから郵便の管轄も当然そうなる。千早赤阪村からのロープウェイが出来たあとは大阪側から配達していたのだろうか。そのロープウェイも耐震に問題ありで運行休止となり、とうとう廃止撤去が決まったらしい。これで金剛山は高度成長期以前の状態に戻る。比良ロープウエイと同じ運命、自然保護という視点では、それはいいことかも知れない。

2月に郵便道を登ったことがある。そのときには高天彦神社から2ピッチかからずに山頂に着いた。今回は最近足腰の不調を口にするカミサンと一緒なのでゆっくりしたペース、雪の量もあのときより多い。登山道の半ばからアイゼンを装着する。私はチェーンアイゼン、カミサンにはスパイクとチェーンが組み合わさった滑り止め、この程度の雪ならちょうどいい足回りだ。

連休の中日ということもあってか、頂上は賑わっている。ロープウエイは動いていないが、千早赤坂村から登る人が圧倒的なんだろう。気温は0℃、最近は近場の山登りが少なくなったので、久しぶりにコンロを使う。やっぱり暖かいものがいい。こちらはカップ麺だけど、隣ではぜんざいを作っている。かと思えばソフトクリームを食べているおばさんもいるぞ。

天候は悪くないのに、ガスに包まれていて頂上広場からの眺望はない。その代わりと言うのか、雪だるまの展示会場の様相を呈している。何となく登山者の年齢層がわかるキャラクターという気もするが、力作揃いだ。積雪のあとに山頂の気温があまり上昇していないおかげか、完成後間もないのか、全然形が崩れていない。

来た道を下る。膝が笑うと宣うカミサンは足を滑らせること4回、うち尻餅1回という状況、雪道ではあるけど、やはり私以上に運動不足なんだろう。ともあれ、無事下山、午後3時前。

高天から南へ県道を10分ほど走ると市立五條文化博物館がある。少し前にテレビで博物館の建築にスポットを当てて紹介していたのを見たので、ついでに立ち寄ってみた。設計が安藤忠雄、臨海部にある巨大な石油貯蔵タンクのような外観だが、中央は空間になっているらしい。それで「ごじょうばうむ」という愛称ということのよう。こんな山間部に建てて、どれほどの見学者が来るのだろうか。5万人の森公園広場の芝生で遊ぶ子どもや、柿の里ファームの農産物販売を覗く人の姿はあっても、博物館に出入りする人影はない。私たちも建物の外側をウロウロしたが入場はしなかった。相当な予算を注ぎ込んで作った施設だろうけど、なんだか微妙なハコ物という感じだ。ご多分に漏れず指定管理に移行している。

五條の歴史、すぐに思い浮かぶのは天誅組だろうか。天辻本陣跡には行ったことがある。近いところでは五新線か。重要伝統的建造物群保存地区になっている五條新町通りに残る橋梁遺構の奇観や、山間部でバス専用道路になっていた未成線路も歩いた。南朝の関係で言えば、賀名生の皇居にも行った。榮山寺の国宝八角堂も観ている。それぞれ現地に行っているのだから、改めて博物館で何を観るというのかという感じ。全国各地にある民族資料館で同じような昔の農具を見るよりはいいかもしれないが、安藤忠雄氏に罪はないにせよ、この施設、なんだかなあという印象だった。

今回往復した郵便道、頂上近くになってダイヤモンドトレールに合流する。これは屯鶴峰から二上山、大和葛城山、金剛山、岩湧山を経て槙尾山に至る3府県境のコースなんだが、必ずしも府県境を忠実に辿るわけではない。地図を眺めていて、金剛山の北側、水越峠近くに不思議な場所があるのに気が付いた。金剛山から北に流れる川が西と東に分流し、大阪府と奈良県の両側の水系になるという場所、どうしてこんなふうになったんだろう。同箇所を電子国土で拡大してみると、どうも河内に向かうのが本流、大和に向かうのは人為的に高度差のない分水嶺を崩して取水しているように見える。さらに不思議なのは、地図に緑色で示したラインが分水嶺のはずなのに、府県境(旧国境)はここで奈良県が大阪府に食い込み、その上流は奈良県域になっている。この道は昔歩いているはずだが、そのときには意識もしていなかったこと。かつての水利権の鬩ぎ合いの結果なのかも知れないなあ。件の箇所の地名が越口、北の峠の名前が水越峠というのも、なんだか関係がありそうだ。

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