新国立劇場「イル・トロヴァトーレ」 ~ 良くも悪くも
2001/1/23

東京に住むようになってから初めての新国立劇場、嬉しいなあ。何てったって電車で一駅、歩いてだって行けるんだもの。私にとっては、夢のような生活、単身赴任だからカミサンのご機嫌をうかがう必要もないし。

さて、このトロヴァトーレ、いいところ、よくないところ、交々という公演だった。大好きなオペラなのに、感銘度はそれほどでもない。

いいところは、アズチェーナ役のメゾソプラノ、エリザベッタ・フィオリッロが図抜けていたこと。最後の一人ひとりのカーテンコール、客席の反応も正直なものだ。
 ルーナ伯爵のバリトン堀内康雄さん、声はそんなに大きくないが、フレージングはしっかりしていて、よい出来と言ってもいい感じ。
 ジプシーたちが白、ルーナ一派が青、修道女が黒と、衣装の対比が見事で、それぞれ見栄えがする。コーラスのレベルも高い。

反対によくないところは、レオノーラ役のソプラノ立野至美さん。声が私の好みでないのと、引きずるようなフレージングでヴェルディの息の長いメロディラインが台無し。例えば、終幕のアリア「恋はばら色の雲に乗って」のふわっと舞い上がるような軽さがない。"国立"歌劇場に登場するような水準ではない。
 そして、肝心のマンリーコ役のテノール、ダリオ・ボロンテはムラがあった。例のテノール殺しのアリア(Di quella pira)では高音がちょっと苦しかった。したがって(?)リピートは、なし。

アルベルト・ファッシーニの演出は、舞台を左右にスライドさせる展開を多用したもので、その意図はいまひとつ不明。装置もシンプルと言えばそのとおりだが、貧相と言えなくもない。
 指揮者(ダニエル・オーレン) とオーケストラ(東京交響楽団)は、低調。この人は評判倒れの感がある。ピットが歌手をリードし触発するような場面が全くない。

東京に転勤する前に、前売りチケットの販売は始まっていて、安い席はすでに無し。ところが、主役を日本人歌手が占める日については、法人会員の社員向に上のクラスの席が半額販売されている。それを買って出かけた私だが、歌唱水準に疑問符がつくような人が出るのでは、売れ行きが悪いのも仕方ないかな。

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