フィレンツェ歌劇場「椿姫」 ~ グルベローヴァ、グルベローヴァ
2001/4/4

フィレンツェ歌劇場公演、なにしろエディタ・グルベローヴァが歌う「トラヴィアータ」なので、早々にチケットは完売。それでもタナボタ期待で、初日に東京文化会館まで行く。結論から言えば、入場はできなかった(しなかった)。

会場に30分ほど前に着く。当日券は既報のとおりゼロ。しかし「チケット求む」という人はほとんどいない。逆に、4日のチケットを売りたいという人が2名ほど、プラカードを出している。当日のチケットを売りたい人物も一人いたので、訊いてみるとA席45000円、「20000円なら買いますよ」と声をかけたが、たぶん正価で買う人がいたようだ。

やわら私は、「本日のチケット譲ってください」というプラカードを取り出し、掲げて待つ。サラリーマン風の人が声をかけてきて、これもA席45000円で物別れ。貰い物のチケットらしいS席50000円のおばさんが現れ、あわよくば換金という様子でしたが、こちらが「20000円なら」と言うので退散。次に、学生風が、E席20000円(正価)と声をかけてきたので、「10000円」という当方の返事にこれまた退散。開演間際になって、ここでよく顔を見るダフ屋氏が、A席45000円を持ってきたが、「10000円」という当方の言い値に、唖然の体で退散。

そんなことで、結局、初日は見送ったが、開演前の東京文化会館、チケット人間模様、いろいろと勉強になる。

エディタ・グルベローヴァ、完璧なコロラトゥーラは健在だ。第1幕のアリア、安心して聴けるソプラノは多くはない。ただ、彼女、最近はドラマ指向が強くなっているのか、特に後半の歌にはベルカントからの意識的な逸脱があったように思う。特に第3幕の歌は、歌の様式を壊す寸前のような役柄への没入ぶりを感じた。

父親役の巨漢グェルフィは初めて聴いたが、深い声のいいバリトンだ。息子役のマルセロ・アルバレスも含め、主役はそろっているのに、時おり音楽の流れが止まりそうなほど遅いテンポになるのは違和感を感じた。指揮者ズービン・メータの意図なのかどうか判らないが、このレベルの歌手だけに破綻こそなかったものの、歌いにくそうだった。

第1幕で、シャンパングラスが給仕のプレートから転げ落ち、賑やかにプラスチックの音を立てたこと、第2幕で、アルフレードが姿見にコートを掛けたところでは、危うく姿見が一回転しそうになるなど、実演ならでは。だから(?)オペラ通いは止められない。この種の話ばかり集めた本も出ている。私も実際にいろんな事件を目撃した。この「トラヴィアータ」は事故の起きやすいオペラのようだ。

結局、このオペラに投じたお金は30000円(それでもA席45000円のディスカウント)、「清水の舞台から」的な金額で、私のこれまでの最高金額に並ぶ。奇しくも前回もグルベローヴァの「ルチア」、この値段に値する歌手は、世界中でも一握りだ。

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