大野和士/東京フィル「ヴェルディのレクイエム」 ~ 思いがけない再会
2001/4/26

オーチャードホールでのヴェルディの「レクイエム」、大野和士指揮。コーラスは東京オペラシンガーズ。何と言っても没後100年、かつてないほどのヴェルディ・ラッシュ。どれだけ行くことやら…

オーケストラは大熱演、ちょっとピッチが合ってないような気もしたけど、弛緩するところなし。歌手はメゾの寺谷千枝子さんが秀逸、ソプラノの緑川まりさんは、ちょっと声が疲れ気味のような感じ。テノールのマルコ・ベルティは声がよく出たが、曲想からするとちょっと表情過多の感じ。バスのグレゴリー・フランクはどちらかと言うとバリトンで、音域により声質のバラツキが大きくいまいち。

この曲をナマで聴くのは初めて、CDには収まらないダイナミックレンジを実感しました。「怒りの日」の爆発もさることながら、「神の子羊」などのピアニシモの美しさに感動。

安い当日券でも残っていないかと立ち寄った演奏会だった。ところがとS席9000円、A席7500円しか残席なし。当日券を求める人が結構並んでいる。
 こりゃ、やめた、帰ろうか、とも思ったが、開演間際まで当日券窓口付近にいると、向こうから見覚えのある人が…

「岩井さんじゃないですか!」
「あらあ、お久しぶりです。お変わりないですね」
「だいぶ老けましたよ。今日はお聴きにいらっしゃったんですか」
「ええ、チケットは、まだあるんでしょうか」
「値段の高い席しかないので、私はあきらめようかと思っていたところです」

と、そこへ登場した余り券おばさん、何とE席2000円ではないか。

「岩井さん、どうぞ」
「でも、先に来ていらっしゃったんですし…」
「いいですよ、もうしばらく待ってみます」
「でも、申し訳ないです」
「芸の肥やしに、しっかり聴いてください」

と、続いて現れたのが余り券お姉さん、おっとこっちは招待券、早い話がロハ、一も二もなく頂戴する。

「こんなことってあるんですね」
「そこそこの確率であるんですよ。岩井さんと初めてお会いしたときも、よそのおばさんから二人で安く買ったじゃないですか」
「そうですねえ。あのときは、よかったですね」
「こっちの招待券は1階だから、岩井さんどうぞ。私はそちらの天井桟敷で聴きますよ」
「いいんですか」
「いつも私は天井桟敷ですから」

岩井理花さんは二期会のソプラノ歌手、結果的に岩井さんは2000円でS席招待券、私は0円で天井桟敷という合理的(?)な決着となる。チケット入手作戦の間に、この秋、岩井さんが歌うゼンタ(さまよえるオランダ人)、アントニア(ホフマン物語)のことなど、お話ししたが、きっと、どちらも行くことになりそう。
 近くで相対していると、思ったより岩井さんは小柄、舞台に立つと大きく見えるのだろう。でも相変わらず綺麗で若々しい。

1994年、サントリーホールでの片岡啓子・直野資ジョイントリサイタルでの最初の出会いといい、この夜の再会といい、不思議な縁だ。

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