「ラ・マンチャの男 ドンキホーテ」 ~ 珍しければいいという訳でも
2001/5/8

雨も降っているし、どうしようかなと思いつつ、つい寄ってしまった紀尾井ホール。地下鉄永田町駅から歩くと上り坂だし、結構な距離がある。帰りの四谷駅の方がずっと近い。パイジェルロの「ラ・マンチャの男 ドンキホーテ」という本邦初演、東京室内歌劇場公演。

結論、つまらなかった。と言うよりも、楽しめなかった。
 レチタティーヴォも含め原語上演、これは科白の多いブッファでは大変なこと。演奏者の努力は多とするものの、やはり作品の魅力に乏しいことが否めない。

第一幕、途中で寝てしまう。気がついたら第二場になって舞台が変わっていた。歌手は一定の水準だが、微妙にオーケストラと合っていないような気がする。プロンプターが箱に入らず露出していたので、私の座った二階サイドの席ではかなり耳障り。歌手の出をプロンプターが指示している感じで、指揮の若杉弘氏と二重になって混乱気味。

サンチョ・パンザ役のバリトン久岡昇さん、ドン・プラトーネ役の菅野宏昭さんは、声が大きいがちっとも音楽的でなく興ざめだ。ドンキホーテ役のテノール蔵田雅之さんは尻上がりに好調。女声陣(小泉恵子、薗田真木子、若槻量子、小林菜美、小畑朱美)はまずまずの出来。オーケストラは弦が4・2・2・2・1の割には二管。チェンバロの人は精一杯で表情に乏しかった。

上から客席を見下ろしていたら、中央に畑中良輔氏。この人は前にウラディミール・アトラントフのブーイングもののカヴァラドッシの歌唱を紙上で絶賛していたことがある。私は同日の公演を聴いただけに、以来、この人が書く批評は全く信用できなくなってしまった。今回はどんなことを書くのやら。栗林義信氏の姿も見かけたが、彼は第二幕で帰ってしまった。私としてはレアものを聴いたというだけに終わった公演だった。

紀尾井ホールはちょっと不便だが、ホワイエはなかなか綺麗。客席への扉は日本のホールで一番豪華なのではなかろうか。大きくて、厚くて、上等の木を使っている。ところが客席内部のセンスはまるで良くない。上等の木がふんだんに使われているようなのに、上部の円柱や天井、照明のデザイン等は品がない。妙にアンバランスな感じのホールだ。

5月の劇場通いは最初から躓いてしまった。

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