新国立劇場「仮面舞踏会」 ~ 一声千両!
2001/5/13

公演のチラシ

オペラ道楽の友達が大阪から日帰りで合流。昨年までなら、二人して年に数回は上京していたものだ。私が東京単身赴任となり、こちらは交通費はかからなくなったものの、生活費が余分にかかる。世の中、万事うまく行くことはない。
 いつも、一番安い席を買う二人なので、当然のごとく天井桟敷。長い間いろいろ一緒に行っているからでもないが、演奏の評価もほとんどズレがないから不思議。

カーテンコールでの個別採点ではないが、私なりの評価は次のようなもの。

アメリアのノルマ・ファンティーニ(○)… まさにVoce Verdiana(ヴェルディの声)。いいなあ。日本人にはこういう声がほんとに少ない。

リッカルドのフランコ・ファリーナ(◎)… 初来日らしいが、今後の一押しかも。登場の第一声の"Amici miei, soldati"でピンと来る。ただ、第三幕になるとちょっと疲れたようだった。
 アマチュアながら、この役を舞台で歌った会社の後輩曰く、「歌い詰めできつい役だと思います。多分、歌い手にとって一番きついのは第一幕第二場というんでしょうか。 場面が、あのおどろおどろしい場所になるところから、フィナーレまでの四連チャン」。

レナートのパオロ・ガヴァネッリ(×)… 実績のある人のようだけど、喉の奥に詰まったような発声が不快。音域により声質が変わるのも気になる。この役柄にほしい品位も希薄だ。

ウルリカのニーナ・テレンティエヴァ(△)… フレーズの最後でヨッコラショと力むのが、私は気になった。重唱では良かったのに。

オスカルの山崎美奈タスカ(△)… コロラトゥーラが、アンサンブルの中から、オーケストラのピッコロよろしく抜け出す快感が味わえず。ちょっと役柄の要求する声質と違うような。適役の人材なら他に数多いのに。

指揮(菊池彦典)とオーケストラ(東京フィル)は○(一部△)… 第一幕のアンサンブル・フィナーレの尻がピシッと決まらない。初日なので、だんだん良くなるのかも知れないが…。ちょっとルバートをかけすぎのような気もする。そこまでしなくても、この曲では音楽自体がドラマを語ると思うんだけど。

しかしながら、トータルで見れば満足度の高い公演だった。

「仮面舞踏会」は、中学生ぐらいの時だから30年以上も前に、NHKイタリア歌劇のテレビ放映で見たのが最初(年がバレる)。その時の「仮面舞踏会」と「ドン・カルロ」が、オペラの病膏肓へのきっかけだった。この作品では、カルロ・ベルゴンツィとアントニエッタ・ステッラが歌った。どちらも大好きな歌手で、前者はまだ現役かな。歌のフォームが端正でしっかりしていて、美声であることが、どうも私の好みの基準のようだ。

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