新国立劇場「マノン」 ~ 懐かしい舞台
2001/7/14

公演チラシ

この舞台はウィーンからの借り物のようだが、私がニューヨークで観たMETの舞台と同じものだ。ジャン=ピエール・ポネルの演出で、彼が装置や衣装まで手がけた素晴らしい舞台、それを再び東京で観ることができるとは。

すっきりとシンプルな幕と、豪華で華やかな幕の対照が見事だ。ホテルの広間のシーンで二層構造にした舞台、ちょっと新国立劇場では狭い感じもするが、衣装ともども華やかだ。セーヌ河畔の祭りのシーンも、そう。ここでは細部に凝っている。主役たちの歌や演技だけでなく、コーラスの一人ひとりの振付、大道芸人の姿など、あちこちに目移りがしてしまう。

かと思えば、マノンとデグリューの部屋、修道院、街道などのシーンでは、装置も地味で色彩も絞った舞台、ここではスペクタルではなく、ドラマを観て歌を聴いてほしいという意図がはっきりと伝わる。

演出中の転落事故により亡くなったポネル、夢のような舞台を作ってくれた人だけに、早世が惜しまれる。

ジュゼッペ・サッバッティーニのデ・グリューは言うことなし。いつもベストを尽くしてくれるこのテノール、貴重な存在だ。ニューヨークで聴いた故アルフレード・クラウスに引けをとらない。私は、チャイコフスキー、ビゼー、モーツァルトなど、不思議にサッバッティーニを聴いたのはイタリアもの以外が多いのだが、どれをとっても最高水準の歌を聴かせてくれた。

タイトルロールのレオンティーナ・ヴァドゥーヴァ、名前は聞こえているが初めて聴く人、ちょっと不満だ。ボエームのCDで歌っていたミミは悪くなかったのに、よりドラマティックなマノンでは苦しい。そんなに年でもなさそうなのに、声にも傷みも感じられる。歌手としての寿命が短いかも知れない。

ナターレ・デ・カロリスのレスコーは、かなり疑問だ。フランスものを歌うバリトンの人材が少ないのかも知れないが、なぜこの人がという感じ。そもそも声が通らない。天井桟敷まで届いて来ない。スラッとしていて舞台姿はなかなかいいのだが…

アラン・ギンガル指揮の東京フィルは、まずまず好演の部類に入るだろう。コーラスは新国立劇場合唱団、藤原歌劇団合唱部とある。前者は名前だけを見ると座付きコーラスだが、実態はどうなんだろう。

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