二期会「ファルスタッフ」 ~ やはりこれは傑作なんだ
2001/7/15
1993年がファルスタッフ初演100年にあたり、その年にも国内外で何度かこのオペラを観る機会があった。そして2001年は、ヴェルディ没後100年、本邦初演も含む多くの作品が上演されるなかに、当然この最後の作品も採り上げられる。
私にとって、日本人歌手で固めたファルスタッフは初めてではないかしら。思えば、急速にレベルが上がったものです。一人二人の逸材というのではなく、もっと多くの数、全体としての底上げが顕著だ。10年前と比べても大変な差、まして私がオペラを聴き始めた30年あまり前なんて…
特に、このようなアンサンブルが重要なオペラになると、キャストの凸凹は致命的にもなりかねない。いやあ、粒がそろっていること。
ファルスタッフ:直野資
フォード:小川裕二
ナンネッタ:森麻季
フェントン:井ノ上了吏
アリーチェ:川原敦子
クイックリー夫人:与田朝子
合唱:二期会合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー管弦楽団
指揮:ピエール・ジョルジョ・モランディ
演出:井田邦明
直野さんのファルスタッフは、歌ばかりか芸達者で舞台を牽引していく。老騎士に絡む女性陣や若いカップル、さらにもう一人のバリトン、演劇的にもしっかりしていなければ、観ていてつまらないオペラになってしまうが、上出来、上出来。
他のヴェルディ作品と違って、ほとんどアリアらしい歌もなく、ドラマが停滞なしに進んでいくので、音楽的に楽しめるようになるまで時間がかかる。私もこの作品の真価が判るようになったのは、ほんの最近のことだ。
大阪から上京したともだちと、初台・上野の週末連チャン、今回は収穫充分ということになった。