「魔弾の射手」 ~ スペシャル・アーティステック・アドヴァイザー?
2001/8/30

オーチャードホールでの東京フィルのオペラ・コンチェルタンテ・シリーズ。今回はウェーバー「魔弾の射手」。指揮はスペシャル・アーティステック・アドヴァイザーというポストにあるチョン・ミョンフン。

合併後の最初の定期演奏会のマーラー「復活」がチョンの最初の仕事だったが、これは都合により行けず(職場の後輩T君が代打鑑賞)。したがって、このコンビで聴くのは初めて。

さて、感想…。未だ良否について判断できず。良いところ悪いところ交々という感じかな。

良いところ。

チョンのオペラでの経験に裏打ちされた音楽の活きのよさ、推進力を確かに感じる。歌手を信頼して、伸び伸びと歌わせるタイプという感じで、俺が俺がというタイプの指揮者が振る時のような鬱陶しさがない。オーケストラの演奏もメリハリがついている。

悪いところ。

オーケストラは、依然乱れ気味で各楽器のソロも雑な感じ。これは素敵な音、というところがあまりない。終演後のカーテンコールで、指揮者が主要ソロ楽器を立たせるのはお馴染みだが、この曲で活躍するホルン四本を立たせた時に、彼らが「狩人の合唱」の一節を吹いたのには驚き。全然合っていないし、事前に打ち合わせてそんなことをするぐらいなら、本プログラムできちんと吹いて欲しいもの。私の座る天井桟敷でも、きつい批判の声が聞かれた。馴れ合いになってしまっては、先が危うい。オーケストラと指揮者と聴衆、緊張関係がないと駄目だと思う。

合併後のオーケストラを鍛えて、アンサンブルの水準を引き上げる指揮者の人選として、チョンが正しいのかどうか私にはわからない(どちらかと言えばネガティブな印象)。と言うのも、チョンがパリオペラ座バスティーュを去る直前の「シモン・ボッカネグラ」を現地で観る機会があったが、ハッとするような音はオーケストラから聞こえなかったから。しかし、あまり早く結論を出すのは気の毒、気長に構えることにする。

一方の歌手とコーラス、これは断然素晴らしかった。あとでプログラムを見ると、三人の外国人歌手は、この曲の経験が豊富で、これまでにチョンとも共演しているよう。なるほどねえ。

テノールのペーター・ザイフェルト。だいぶ前に大阪でルチア・ポップ(故人・美人薄命)と共演したリサイタルで聴いたときは、リリックというイメージで、両人のメリーウィドウのワルツなんかハマっていたが、今やヘンデンテノールそのもの。こんなに体が大きかったかなあ。むちゃくちゃ貫禄ついてる。声の輝かしさは増し、立派な歌唱だった。でも、ちょっと低いところは出にくいようだ。

ソプラノのマリア・シュニッツァー。この人も大きい。折り目正しい歌だと思う。有名な「アガーテの祈り」は、最後でちょっとガス欠気味なところがあり、惜しいなあ。

バリトンのアルベルト・ドーメン。なかなかすごみのある声で、悪役にはぴったり。この人はいい。

ソプラノの高橋薫子(のぶこ)さん。あちこちで引っ張りだこ。若手の砂川涼子さんの先輩格で、ダブルキャストで出ることが最近多い。舞台映えがするチャーミングな容姿。大きな目の表情がいい。もちろん、歌もしっかりしたもの。砂川さんは「イル・カンピエッロ」で気に入ったが、甲乙つけがたい。この声域(リリコ~リリコ・レッジェーロ)のソプラノの人材は豊富だ。

気になったのは、外国人三人が暗譜で伸び伸び歌っていたのに、脇役を含め日本人歌手が譜面付きだったということ。まあ、科白もある曲だから仕方ないか。

夏場はアウトドア中心で過ごしたため、約ひと月ぶりのオペラとなる。

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