若杉弘/都響/ヴェルディ ~ ひと味違うプログラミング
2001年9月7日

東京都響の定期演奏会。若杉弘指揮、二期会合唱団によるヴェルディ没後100年記念の合唱曲中心のプログラム。

公演のチラシ

このコンサートは有名合唱曲を並べたものと思っていたが、プログラミングが大変に凝っていた。大阪フィルの定期で、同じ若杉氏がクルト・ヴァイルのプログラムを演ったときもそんな感じだった。

残念ながら、私は奈良に帰省の予定があったので、前半で東京文化会館を後にしたが、後半も聴きたかったなあ。

何が凝っているかと言うと、合唱曲オンリーではなく、非常にバラエティに富んでおり、飽きさせないということ。前半だけで言うと、次のようになっている。

「ナブッコ」の序曲 … これは普通の始まり方。
 「マクベス」の女声合唱 … 曲が始まってから合唱が入場。
 「マクベス」のバレエ音楽 … 普通は省略されるパリ版で、耳新しい。
 「シチリアの晩鐘」のバレエ音楽 … オペラ自体の上演が稀、「四季」というタイトルの長大なバレエ曲。
 「ロンバルディ」の間奏曲 … バイオリン協奏曲風の珍しいつくりのもの。
 「リゴレット」の男声合唱 … ここでやっと男性合唱も登場。
 「アイーダ」のバレエ音楽 … 凱旋の場に先立つ音楽。
 「アイーダ」の混声合唱 … 前半の終わりを凱旋の場で盛り上げ。

順次、人数、編成が増し、間に普段はあまり耳にしない曲を挟んでいる。リゴレット、アイーダでは普通舞台裏で演奏するバンダだが、舞台上の奏者が演奏する。ただ、この試みは視覚的な効果を狙ったと思うが失敗だろう。なぜなら、リゴレットの木管は舞台上でやると騒々しいばかり。これはやはり、距離をおいて聞こえてきてこそ効果があるものだと思う。アイーダに至っては、舞台袖に十人以上の別働隊で、第二指揮者を配しているが、これは無理というもの。二人の人間が指揮して合うはずもなく、1/100秒単位でずれている。入りと切りのところは意識するから余計にギクシャクしてしまう。でも、オーケストラは熱演、合併東フィルとは随分違う。各パートやソロがちゃんと他の音を聴いて演奏しているのが判る(残念なから今の東フィルは…)。

コーラスの出来は水準かなと思う。採り上げたコーラスはとても特徴のあるものばかり、マクベスは魔女の特異な発声だし、リゴレットにしても声を潜める歌い方のものだ。意外だったのは、若杉氏が結構テンポを動かしていたこと。クライマックスの直前で目立って緩めるなんて、あまりこれまで耳にしたことはない。ナブッコの序曲などで特に顕著(故シノーポリほどではないが)。

聴かなかった後半も、同じような構成のよう。最後はドン・カルロの異端者火刑の場で、それまでに群盗のチェロ協奏曲風の序曲、トラヴィアータの弦五部だけの第三幕前奏曲、イル・トロヴァトーレやオテロのコーラスなどを入れている。絶対にあるはずのナブッコのコーラスがないのは、アンコールピースとしてリザーブしていたんだろうなあ。最後まで聴かなかったから、判らないが…。

ヴェルディの多彩さを再認識するとともに、プログラミングのおもしろさも聴く楽しみのひとつということを実感した。

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