「さまよえるオランダ人」 ~ 花束抱えて、地下鉄で
2001/10/13

東京都民オペラソサエティの公演で、岩井理花さんが歌うもの。10月人事異動で東京から動かなかったので、それから彼女にチケットをお願いした次第。

文京シビックホールは初めて、きれいでこぢんまりとした感じ、音響もややライブだが悪くない。キャパも大きくなくて、歌手にはいいんじゃないだろうか。

税金の無駄遣い、とか言われたように思うが、文京区というか東京都、お金あるんだなあ。ホールの椅子は、お尻の2/3ぐらいの部分が跳ね上がるような仕組、きちんと腰掛けないと座り心地が悪い。

この作品は、何回か観た舞台のなかで、ケルン歌劇場の来日公演が印象に残っている。あれは休憩なしのぶっ続けで、ドラマの凝縮感があった。大阪音大のカレッジオペラハウスでの演奏会形式も良かった。この作品の頃のワーグナーは、イタリアオペラの語法で書いていることが、よく判った(演奏会形式のメリット)。

今夜の岩井さん、ほんとに素晴らしかった。

チケットをお願いしたときの返信の手紙に、「ゼンタは、きっとそれなりに、はまって歌えると思います。あとは如何にのどをキープするか…です。それでは、当日をお楽しみに…!」と、読みようによっては、大変自信に満ちたコメントがあったが、その言葉に偽りなし。

初めて聴いたときの「イル・トロヴァトーレ」のレオノーラも出色だったが、その後何年かで、声も出来上がってきたという感じ。いよいよ最盛期を迎えるというところ。ブリュンヒルデも視野に入りそう。もっとも、私としてはドイツものよりもイタリアもので聴きたいなあ。彼女がアイーダやトゥーランドットを歌ったりしたら凄いと思うんだが…

前に、彼女には、サロメやバタフライを今歌うのはリスキーじゃないですかと、手紙に書いたが杞憂に終わるかも。相変わらず美しい舞台姿、ずっとオペラグラスで凝視、これじゃほとんどストーカー。
 今日の公演は、第一幕のあとに休憩、第二幕・第三幕は続けて演奏された。その休憩の前後の落差の大きいこと。第二幕になって、岩井さんが登場して、がらっと変わった(アマチュアからプロにという感じ)。

狂言回しとなるダーラント役の菅野宏昭さん、この人はちょっと問題。声が大きいが、あまり音楽性を感じない。平板でどうも品位も欠ける。いつか聴いたような気がすると思って、データをひもとけば、若杉氏の「ラ・マンチャの男」でも同じ印象を持ったのが、やはりこの人だった。どうして、こんなことはよく覚えているんだろう。
 オランダ人の水野賢司さん、この人の歌はしっかりしているが、惜しむらくは声量がない。
 エーリック役の青柳素晴さん、これまで聴いたことはないはずだが、いいテノールだ。ワーグナーだって基本はベルカントだし。

コーラスはアマチュア、オーケストラはプロかアマか判然としない。女声コーラスはきれいだが、男声は地声がポロポロ聞こえて、登場場面の多いこのオペラだとしんどい。一生懸命やっていることは、とてもよく判るんだけど…

オーケストラは弦が少なすぎる。特にヴァイオリン。第一・第二あわせて5プルト10人(陰で見えなかったとしても12人)というのはあんまり。ブラスがやけに張り切っていただけに、ちょっと弦が薄すぎて序曲~第一幕の響きが異様なものになっていた。

チケットを岩井さん手配してもらったこともあり、地下鉄に花束を抱えて乗る。最寄り駅の笹塚で、主婦が買うような花屋さんだと2000円でとても立派な花束を作ってくれる。これが都心の日比谷花壇とかになると、そうはいかない(何てったってコストパフォーマンス第一)。

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