新国立劇場小劇場「花言葉」 ~ 時代から取り残された
2001/10/14

朝の9:30に新国立劇場に到着、30人ぐらいの列。この日は、オペラ「忠臣蔵」の一般前売、バレエ「ロメオとジュリエット」と「花言葉」の当日格安Z券目当ての人たちが混在。どのような分布かなと思っていたら、15分ぐらい前になって、劇場の人が列を分離。結果、「忠臣蔵」5~5人、「花言葉」5人、あとはバレエだった。「花言葉」の4番目だったので、楽々Z券をゲット。

バルコニーのもっとも舞台よりの席(左右5席ずつがZ席)、字幕が少し見にくい以外は問題ない。新国立劇場のチケットは安い。加えて、安いチケットを求める客を大事にする姿勢があって好感が持てる。いつも前売りの列を整理する担当の小山さんという男性、手際もいいし、言葉も丁寧だ。こういう人が草の根で文化を育てるんだろう。

新国立劇場の大・中・小の三つのホールがフル稼働という日も珍しい。中劇場は「コジ・ファン・トゥッテ」、終演後の帰り客が多いのもそのためか。

ロッセリーニ(1908-1982)の「花言葉」、三幕立てで、各幕が30分程度、現代ものと言ってもいい作品だが、難解でもなく観やすいオペラだ。ただ、作品自体はどうなんだろう。あまりにも暗いし、音楽も惹きつけるところが多いとは言えないし…。時代背景などが判らないので、従兄の許嫁を待ち続けて老いていくヒロインに感情移入できないところも…
 また、女声に過度にウェイトがかかっているので、単調な感じもある。同時代のブリテンに比べると、やはり作品としてのレベルの違いを感じてしまう。

オーケストラは東京フィルのメンバーのようだが、少人数だけに各パートともしっかり演奏していたと思う。指揮者の宮松重紀氏はスコアを置いていたが、めくる訳でもなく実質暗譜でやっていたし、これだけ言葉の多いオペラの歌詞を覚えていて、プロンプター並みに口を動かしていたのには感心した(バルコニーだとよく判る)。

叔母役の林美知子さん、確かになかなかいい。歌だけでなく、演技のできる人と見受けた。主役ドンナ・ロシータの半田美和子さんも立派。舞台に近すぎて、声が聞こえすぎるぐらい。幕とともに老けていくという設定、女性歌手にとってはどんな感じなんだろう。メークもよくできていたと思う。演出は今井信昭氏。

従兄の樋口達哉さん、叔父の泉良平さんと、男声も登場するにしても、家政婦の高尾佳余さんや脇役陣を含め、女声が目立つオペラだ。何となく、プッチーニの「修道女アンジェリカ」を思わせるところがある。あれも、暗く救いのない話で、これまた一脈通ずるところが…。あの曲は、私、けっこう傑作だと思っているのだが、「花言葉」はその域には…

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