二期会「ホフマン物語」 ~ わっ、スター誕生
2001/11/2

東京文化会館での「ホフマン物語」、二期会の公演。ナマの舞台は1987-88シーズンにニューヨークで観て以来ということになる。

この夜の収穫は、何といってもオランピアを歌った森麻季さん。ファルスタッフにも出ていたが、ナンネッタはそんなに目立つ役じゃないし(これはちょうど4日にNHKテレビで放映)。ところが、オランピアは素晴らしかった。テクニックに不安がないし、高音域でこんなに柔らかく暖かい音色の人は他に知らない。普通、コロラトゥーラは、どうしても硬質で冷たい感じになりがちなのに。森さんの声は、グルベローヴァやデッセーにもないような音色だと私は感じた。

タイトル・ロールの福井敬さん、後半は絶好調。前半はアクートのところが目立ちすぎる感があり、声域全般のバランスや均質感が感じられなかった。でも、全体通して熱演。やはり、この役はドミンゴのような理知的な歌では違和感がある。ニューヨークでドミンゴとのダブルキャストで聴いたニール・シコフの方が、私は良かったと思っている。何と言っても、イカれた芸術家という役回りだもの。福井さんの歌はシコフに近い(これは褒め言葉)。
 メゾの寺谷千枝子さんは最初いまいちだったが、男装になってからは本領発揮とみた。

さて、岩井理花さん。なまじ、ご本人を存じ上げているだけにコメントしづらいところ。アントニアは、幕が上がっていきなりアリアというのは大変だと思う。ちょっと固い感じを私は受けた。ただ、福井さんとの二重唱以降はとてもいい感じ。リリコ・レッジェーロやコロラトゥーラの人材は多いが、この声質の役をやれるソプラノが少ないだけに、岩井さんに益々期待したいものだ。ドイツものよりもヴォーチェ・ヴェルディアーナの役に進んで欲しいというのは個人的希望。

ジェローム・カルタンバック指揮の東京交響楽団は、いつになく生気のある演奏だった。新国立劇場のピットではがっかりすることが多かったのに、今回はいい出来。ちょうど一年前、同じ東京文化会館、席も同じ5階R列舞台寄りで、ベルリンフィルを聴いたが、やはり比較しては気の毒かという感じ。あっちは、完璧なバランスで聞こえてくるから…。それでも、ロイヤルオペラハウスあたりのオーケストラに比べれば、東京交響楽団、遜色はない。

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