ノセダ/東響「千人の交響曲」 ~ これだけたくさんいると
2001/11/10

公演のチラシ

マーラーの第8交響曲、いわゆる「千人の交響曲」を、東響交響楽団の定期演奏会で振った指揮者のノセダ氏は、ただものではないと見た。

この曲は、マーラーの交響曲のなかでは、駄作に近い曲だと思っていた。自宅でレコードやCDを鳴らすなんて、この曲だと不可能だし、実演もそんなにあるもんじゃない。ずいぶん前に、故ジュゼッペ・シノーポリが大阪のフェスティバルホールで演ったのを聴いたが、はっきり言って凡演だった。曲自体がつまらないし、いくら指揮者が変人・才人で頑張ったところでと思っていた。

この日の演奏、この曲も捨てたものではないと認識した。騒々しさはほとんど感じなかったし、東響コーラス、にいがた東響コーラスの合唱も見事(この曲で気持ちよく眠れるとは…)。創立55周年記念定期演奏会ということもあって、相当にコーラスは練習していたと思う。公演毎にオーディションをしているらしいから、変なメンバーが混じっていないのだろう。こどものコーラスも素晴らしいものだった。

舞台上に千人いたかどうかは不明だけど、なにしろ退場にも時間がかかる。まばらになった客席から、とっくに遠に終わった拍手が、こどもたち(東京放送児童合唱団)の退場に再び湧きあがったのは感動的(私も最後までスタンディングオベーション)。

出だしはオーケストラとコーラスがしっくりいかない感じがあったが、それもすぐに解消。第一部では意識がなくなったところもあるが、第二部では目もパッチリ。

ソリストでは、佐藤しのぶさんと森麻季さんが出色。佐藤さんの声は群を抜いている。この厚いオーケストラを突き抜けて聞こえてくるのは、ちょっとものが違う感じ。ただ、この人は難しいところにいるんだろうと思う。才能が日本では突出していても、海外でプリマを張れるところには少し距離がある。日本では(妬まれて?)疎まれがちの感じだし、かと言って海外で強力なコネクションもなさそう。自分で音を出さない指揮者なら、コロンビア・アーティストみたいなところがゴリ押しすれば、スターダムに上がることがあっても、歌手の場合だと誤魔化しが効かないし…

森さんのパートは、ほんの少しなのだが印象的。「ドン・カルロ」の「天からの声」をこの人が歌ったら、ほんとに素晴らしいだろうなあ。

他のメンバーは、家田紀子(ソプラノ)、坂本朱、栗林朋子(メゾソプラノ)、エフゲニー・アキーモフ(テノール)、フェドール・モジャエフ(バリトン)、妻屋秀和(バス)という面々。

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