新国立劇場「ドン・ジョヴァンニ」 ~ オペラは水もの
2001/11/16

新国立劇場の「ドン・ジョヴァンニ」、予想と大きく違う展開だった。

公演のチラシ

まず、題名役のフルッチョ・フルラネット、これが全然ダメ、と言うより私はNo。声も出ているし、歌も立派なんだろうが、私は拒否反応が先に立った。春に聴いたばかりのフィリッポ二世(サントリーホールの「ドン・カルロ」)のときは、あんなに素晴らしかったのに…。

役柄の解釈の問題だと思うが、「ならずもの」であることをことさら強調するような歌と演技。どうもこれがなじめない。確かにそんな主人公であることには違いないが。そこまでやらなくてもいいのに、と思ってしまう。モーツァルトが書いたのは、こういう音楽だったんだろうか。

ドン・オッターヴィオを歌った櫻田亮さん、まさに新星発見。まだ東京芸大大学院に在学中とか。ピュアな声としっかりした歌、それと声に色気がある。モーツァルトのテノールの役柄、ロッシーニ、ドニゼッティなどもいいだろうなあ。大変に若いし、これからがとても期待できる。ダブルキャストでメインキャストの組に抜擢されただけのことは確かにある。

ツェルリーナの高橋薫子さんも好調。ほんとにチャーミングな歌と演技だ。ダブルキャストの砂川涼子さんも聴きたいところ。砂川さんは高橋さんよりはずっと若くなるが、甲乙つけがたいし…

ドンナ・アンナを歌ったアドリアーナ・ピエチョンカ、彼女も良い出来だった。オペラグラスで見ていると、ジョーン・サザランドやジューン・アンダーソンと同じ顎をしている。あの顎だと、こういう声が出るのかなあ。

ドンナ・エルヴィーラを歌った山崎美奈タスカ、彼女はダメ。立派な声は出る、しかし、あのふらつきっばなしの音程はいただけない。アリアで特にそれが顕著、アンサンブルは問題ないのだが…

レポレッロのナターレ・デ・カロリス、マノンのときよりはマシだったが、やはり声がないのが歴然。この先の「ウェルテル」にも出るようだが、私は好きになれない。他の人はいないものか。

他のキャストはマゼットが久保田真澄、騎士長が彭康亮、ポール・コネリー指揮の東京フィル。演出はロベルト・デ・シモーネ、ウィーン国立歌劇場との共同製作で今回は再演、前回は評判が良かったらしいので期待していたのに、普通の感じ。場面の転換がスムースで音楽が途切れないのはいいのだが…

この作品にしても、「フィガロの結婚」にしても、「魔笛」にしても、モーツァルトは長い。とんでもなく長い訳ではないのに、いつも長いなあと感じてしまう。ドラマの進行に関係のないアリアやアンサンブルが入るせいかなあ。私が演出家や指揮者なら、思い切ってカットしてしまうのだが…。「後宮からの誘拐」ぐらいの長さが、モーツァルトはちょうどいい。

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