東京オペラプロデュース「二人のフォスカリ」 ~ あまりに悲惨な!
2001/12/8

公演のチラシ

8日の土曜日、新国立劇場オペラ劇場の「ドン・カルロ」を尻目に、中劇場での「二人のフォスカリ」へ。ヴェルディ・イヤーの今年は本邦初演ものが多く、これは先の「アッティラ」に続くもの。
 この作品は、物語は暗いが音楽は渋くて好きなので期待していたが、とんでもない公演になってしまった。主催の東京オペラプロデュースという団体は直前に火災に遭い、それでも何とか公演に漕ぎ着けたということらしいが、肝心のオペラ公演も厄災になってしまっては…

何しろ、主役のテノール、田代誠氏が絶不調。最初のアリアは、聴くに堪えないものだった。私は、「風邪を引いているんじゃないか」と思った。高いところは全く出ないし、声は濁るし、音程も怪しい。本人も不調を自覚しているせいか、逆に声を張ろうとして悪循環に。

第1幕が終わった後、こんなことを今までしたことはなかったが、プログラム売場にいた主催者の一員とおぼしき女性に申し上げた。

「テノールの方、風邪でも引いておられるんですか。あれじゃとても舞台に立てる状況じゃないですよ。明日とダブルキャストなんだから、入れ替えるとか、途中でも替えるとかできないんですか」
 「申し訳ありません。ご本人も楽屋では神経質になっておられたようです。何しろ、このテノールは大変難しいので…」

この役が難しいことぐらい、言われなくても判っている。でも、5000円とって新国立劇場(中劇場)で聴かせるんだったら、そんないい訳は通用しないだろう。この女性を責めても仕方ないので、それ以上は言わなかったが…。イタリアのパルマあたりなら、間違いなくフィアスコ(大荒れ大失敗の舞台)、ブーイングはおろかポモドーロ(とまと)が飛んでも不思議ではないかも。

また、田代氏は単に調子が悪いというだけではない。この人は、ヴェルディの音楽をわかっていないんじゃないかしら。ヴェリズモと同じ歌い方をすると全くダメということを、自ら音大で教えていないのかしら。ヴェルディの息の長い旋律を、不用意なアクートが殺してしまうということを…

他の出演者は好演だったと思うし、作品自体も傑作と呼んでもいいと再認識したが、本人にはお気の毒ではあるけど、田代氏でぶち壊しになってしまったと言うほかないなあ。

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