ブゾーニ「ファウスト博士」日本初演 ~ こりゃ、かなり重い
2002/2/8

珍しいオペラ、ファウスト博士、渋谷に駆けつける。これは、なかなか重い音楽体験だった。バレエ音楽をカットしたらしいが、それでも正味二時間半、ちょっと疲れた。

ファウスト役のイェニス氏、出ずっぱりで大変難しいと思うのだが、十分にこなれていて、ほんとうに秀演だった。一瞬ドラマティクテノールかと思うほどのハイバリトン、声に力も陰影もある。ただ、前半はオラトリオかと思うほど動きがなく陰鬱な雰囲気で、ちょっと私は体調が良くなかったせいか、気を失う場面も。

休憩の直前にメフィスト福井敬さん登場。オテロ登場の場面に匹敵するほどの圧倒的な第一声だ。私はいっぺんに目が覚めて、ゾクゾクしてきた。昨秋のホフマンはとても良かったが、これはそれ以上かも。

おっと、忘れちゃいけない、東京フィル。このシリーズの東京フィルは通常の定期やピットとは全然違う。チョンの「魔弾の射手」のときよりも、遙かに密度の高い音が出ている。そう、大野和士さんがこのシリーズをやっていた頃の音を彷彿とさせる。

看板シリーズで、年二回、初演ものも多いし、練習量が全然違うんだろう。年末のドン・カルロの初日で私はほとんどキレてしまって、裏でやっていた定期演奏会の会場で事務局の人に「ありゃいったい何だ」とくってかかったが、東京フィルに厳しくなる訳が判った。
 早い話、オペラ・コンチェルタンテ・シリーズの最初の頃からの会員で、これ以外ではあまり聴くことがなかったから、オーケストラの水準について美しい誤解をしていたからなんだろう(その後の合併という事情はあるにしても)。

今年はこのシリーズはお休みのようで、定期で沼尻竜典さん(びわ湖で聴いて以来、注目しています)のイドメネオもあるみたいだし…
 そう言えば、池袋で聴いたワーグナー・プロも沼尻さん、緑川まりさんの復調ぶりがうれしかったのと、東京フィルが新国立劇場から降ろされた「ジークフリート」と「神々の黄昏」での出来がとりわけ良かったことに、私はこのオケの意地をすこし感じたものだった。がんばれ。

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