お見事、旅回り一座 ~ 錦織健の「コジ・ファン・トゥッテ」
2002/2/11

行ってきました、出来たてホヤホヤの郡山城ホール。大和郡山と言えば金魚の産地で全国的に有名なぐらいで、音楽ましてやオペラなんぞとは無縁のように思ったが。
 新しいホールはホワイエから、正面に郡山城が見える。建物自体もお城に調和させたのか、白壁と瓦屋根というもの。びわ湖ホール同様、ロケーションには恵まれている。

さて、錦織一座の巡業は、9日の橿原市(同じく奈良県)がスタート。ほぼ一日おきに興業があり、ひと月ほどかけて全国行脚、最後は横須賀のようだ。特に、この郡山では宝くじの助成があるため、半額程度の料金設定。したがって、奈良は言うに及ばず、大阪、京都あたりから足をのばした人も多かったようだ。ホールは1052名のキャパなので小振り、このオペラにはちょうどいい大きさだ。

私は最近の何回かは「当たり」続きで、今回もその例に漏れず。巡業のはじめということで気合いが入っているのか、すべからく出来がよく、あまり欠点が見あたらない公演だった。
 歌手はみんな好調、アンサンブルもきれいに決まっている。長いレチタティーヴォを省略もなしに、プロンプターもつけずにこなしたのは立派(原語上演)。巡業に先立って、相当に練習を積んだ模様。

座長が気合いが入っているのは当然にしても、澤畑恵美さんがよかった。最初はそれほどでもという感じだったが、有名なアリアは素晴らしかった。以降、最後まで間然するところなし。
 足立さつきさんのデスピーナも魅力的、得な役回りとは言え、出演者で随一の言葉の明晰さ、耳にとても心地よい。

この一座、メンバーの人選がとてもいい。何しろ声に若さがないと、このオペラはねえ。出だしでは声が響きすぎるかなあと思ったが、すぐにホールの感覚をつかんだのか、たちどころにアジャストしたところが流石にプロ。一度ずつ、大きさも音響も違うホールでというのは大変だろう。

それから特筆ものは、オペラハウス管弦楽団。これは日本で唯一の歌劇場付のオーケストラ、豊中市の大阪音楽大学のカレッジオペラハウス(これも日本初のオペラハウス)の専属オーケストラだ。一緒に行った友人と幕間に、ドン・カルロのときの東京フィルとはダンチだねえと喋っていた。そんなに名人揃いではないにせよ、このオーケストラの仕事は信頼感がある。真摯に音楽をやっているのが伝わってくる。今まで結構珍しいもので何度も聴いているが、あまりハズレがない。今秋にはトゥーランドットをやる予定とか(プッチーニでなく、ブゾーニ)。

ひと月の長丁場で旅回り、しかもシングルキャストともなれば、好調を持続するのは大変だと思う。アンサンブルは練れてくるとは思うが、逆に疲れや緩みもありそう。次は大阪のフェスティバルホール、極端にキャパが違いすぎるのも声にはきついかも。スタート直後の気合いが入った2公演目、最適な大きさの新ホールのこけら落とし、好条件が重なったとも言えるだろう。

全国に良いホールが多くできており、オペラファンの数も増えているので、旅回り一座という発想は正解だと思う。二流の外来歌劇場のドサ回りよりも、国内のトップクラスの歌手をたくさんの人がナマで聴くことの意義は大きいと思う。問題は演目がどうしても限られるということだが…

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