もはや三期会か? ~ 二期会「フィガロの結婚」
2002/2/27

二期会のフィガロの楽日の27日、東京文化会館に行く。
 実は、私はこのオペラ、あまり好きじゃない。長い、暗い、退屈、というのが固定観念のようにある。モーツァルト、正直けっこう駄作が多いと思う(オペラは冗長だし)。ほとんど神格化されていて、あまりこんなことを言う人はいないが…

23日に観た友人は、歌手はロジーナの佐々木典子さんひとり、あとは、という印象だったようです。演出、宮本亜門とかで宣伝していた割には、何の変哲もないありきたりの舞台、とのコメントも。
 まあ、そんな先入観は持たず、1500円で譲り受けたチケットを握りしめて、いつもの天井桟敷。4日目、平日の公演なのに盛況だ。

公演のチラシ

これは相当な水準の上演だ。歌手のレベルが高いところで揃っているし、アンサンブルも破綻がない。Bキャストだが、こちらがメインなんだろう。二期会もここまで来たのかという感じ。50周年を機に、三期会に名称変更したらいいのに。

アルマヴィーヴァ 多田羅迪夫
 ロジーナ 大倉由紀枝
 ケルビーノ 井坂惠
 フィガロ 稲垣俊也
 スザンナ 松原有奈 他

個々の歌手については、細かいことを言うといろいろあるが、出来の良さで一人選ぶとすれば、私は多田羅さんかな。声と言い、歌と言い、演技と言い、文句をつけるところなし。

大倉さんのクリーミーヴォイス、いいなあ。舞台映えもするし。二つのアリア、高いピアノの持続音でわずかに不安定なところがあったが、疵と言えるほどのものではない。

井坂さん、けっこう拍手をもらっていましたが…。この役にしては、好みの分かれる声、演技かなという気がした。

稲垣さん、立派な声です。反逆児としてのフィガロ、やはり若さを感じる声でないとね。力強さを感じる一方、力を抜いたところでの丁寧さが課題かなあ。

松原さんも好演、リリコ・レッジェーロは、ほんとに人材豊富だ。あまりに多すぎて、その中で目立っていくのは逆に大変なところ。

パスカル・ヴェロ指揮の東京フィル。最近聴いた演奏は気合いが入っていたのに…
 ドン・カルロ初日ほどではないが、ああ、また逆戻り。準メルクルの気持ちが判るような。木管の人たち、少しは舞台の上の声を聴いて演奏してほしいなあ。定期演奏会でも、他の楽器の音を聴いていないのかしら。オーケストラが薄いモーツァルトでは、無表情さの目立つこと。例えば、ケルビーノのVoi che sapete…、木管の音は大きすぎるし、全部ポワ~ンという無粋な音。

宮本亜門の演出、私はポジティブに見る。ちょっと人物を動かし過ぎだけど、奇をてらうところはない。すっきりした舞台だった。私だけの印象かも知れないが、シンプルな装置で落ち着いた雰囲気のなか、どこか暗さを感じさせる演出だったような。俗物ぞろいの登場人物、とってつけたような結末、音楽も美しい一方でシニカル、この続き(罪ある母)ではロジーナがケルビーノの子供を産むのだから単純な喜劇じゃない。

モーツァルトもロッシーニ(セヴィリアの理髪師)ぐらいの長さにしておいてくれたら、よかったのになあ。

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