「カプレーティ家とモンテッキ家」 ~ ベッリーニ堪能
2002/3/16

「カプレーティとモンテッキ」の二日目、邦人キャストによる公演。

公演のチラシ

何と言っても、森山京子さんのロメオが出色。第一声は緊張気味だったが、音楽が進むにつれてヒートアップ。一番低いところでの音色の違いが少し気になるものの、中高音域での声の伸びの美しく素晴らしいこと。まさにベルカント。第二幕第三場、墓所で客席に背を向けて、Ecco, la tomba…と歌い出すときも、クリアに天井桟敷(4階R)に聞こえてきた。

相手役、佐藤美枝子さんも好調。チャイコフスキー・コンクール直後、大阪国際フェスティバルでのリサイタルを聴いたことがある。あのころの勢いに任せたようなところも好感が持てたが、今は歌にずっと深みが増したような気がする。ストラヴィンスキーのナイチンゲールで聴いたときは、出番も少なく、よくわからなかったのだが…

小林一男さんは、声が全く好みじゃないので論評は控える。まあ、ソプラノとメゾが揃えば、これは十分すぎる訳だし。

二人の女声の融合も素晴らしかった。昨夜のAキャストは聴いていないので比較できないが、1988年に大阪で観たスカラ座来日公演の薄い印象を考えると、今日の公演は、とても素晴らしいものだと思う(あのときはピットに立っている人が問題で、ベルカントを堪能できなかった)。

演出もシンプルで、光と影を上手に使った美しい舞台だった。オーケストラも出しゃばらず、ほんとうに舞台に集中できる。これがほんとに、あの東京フィルか、木管群のフレージングのぞんざいさには、腹立たしい思いをすることが多いのに…。第二幕第二場の冒頭のクラリネットのメロディの美しかったこと。ホルンは相変わらずダメだが、今日の木管群は見直した。やはりオペラの音響は新国立劇場よりも東京文化会館なのかも。

余談になるが、第一幕第二場のジュリエッタのアリアQuante volte…の後半の消え入るようなピアニシモのところで、後ろの席でバッグからティッシュを取り出しているのか、カサコソ、カサコソ。よりによって、何もこんな最高のクライマックスのときに…

幕間の休憩が終わるころ、立ち上がって後ろに向かってひとこと。
「演奏中にカサコソ雑音をたてないようにお願いします」
「!?…鼻水が出るので…」
「それなら、あらかじめ、ちり紙を出しておいてください」

年配のご婦人にそこまで言わなくてもという気もするが、第二幕でも同じことをされたら、たまらないし。私の隣の夫婦連れは、休憩時間中にさっさとどこかに移動していた。黙っているのもよろしくない、環境向上は一人ひとりの努力から。

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