「無口な女」 ~ やっぱり舞台はいいなあ
2002/3/28

私がこの作品に初めて接したのは、1999年2月、大野和士指揮の東京フィル、オペラコンチェルタンテシリーズとしても演奏会形式上演だった。その頃は大阪勤務だったので、出張にかこつけて駆けつけた。7年間東京を離れていても会員を継続していたのが唯一このシリーズ。そのときが日本初演ということだった。そして今夜、初めて舞台を観る。

今回は東京オペラ・プロデュースの公演で、キャストは山口俊彦のモロズス卿、三崎今日子のアミンダ、高田二郎のヘンリー、河野克典の理髪師(初演のときもこの人)、松岡究指揮のオーケストラ。

この団体の前回公演「二人のフォスカリ」の悲惨な初日を「聴いてしまった」私としては、逡巡しつつも当日券を求め入場した。新宿文化センターの入りは淋しかった。二階席は半分も埋まっていない。当然、開演のブザーとともに二階最前列に移動。

前夜、「中田だ、高原だ」と、夜更ししてポーランドからの映像にかじりついていた私としては、ずっと起きている自信はなかったが、それも杞憂、とても楽しい舞台を満喫。

これはRシュトラウスの「フィガロ」だ。私はCDなどで予習するような「真面目な」ファンではないので、正味聴くのも二回目。でも、前回は聞き漏らしていたことの発見がいくつかあった。特にオーケストラは色々とやってくれる。字幕と対比していると、思わずニヤッとしてしまうところも。

第二幕ではプッチーニの引用やパロディが随所に聴かれて面白い。嫁選びのシーンでのアミンダの歌はボエームからの引用。「刺繍をして過ごす」なんてところでは、Si, michiamano Mimi(私の名前はミミ)の歌詞と似通っていて、そのメロディがオーケストラに現れる。その後のモロズス卿の歌はロドルフォのChe gelida manina(冷たい手を)のパロディだと思う。片や若者、片や老人、その対比、ミミとロドルフォの歌の順番も逆というのも可笑しい。

この幕切れでは、モロズス卿が寝室に去り、ヘンリーが寝ずの番をする。そこでのオーケストラはトゥーランドットのNessun dorma(誰も寝てはならぬ)の前奏の雰囲気を伝えている。他にも色々と引用やパロディがあるように思うが、私が判ったのはそれだけ。

この舞台は2000年にやったものの再演らしく、アンサンブル、演出ともに練れていたと思う。やっぱり、こういうオペラだと、ほんとの舞台を観ないと面白さ楽しさは味わえないなあという感じ。歌手、オーケストラともに好演だった。けっこうカーテンコールでブーイングをしていた人がいたが、私にはさっぱり理解できなかった。CDか何かで聴いたのとは違うということなのかなあ。

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