新国立劇場「サロメ」 ~ マドンナに会えなかったけれど
2002/5/9

トスカと二日連続で、こってりしたオペラを見ると疲れる。何しろ、どちらのオペラも死者3名だ。あっ、トスカは主役三人のほかにアンジェロッティも自殺するストーリーになっているから4名か。Rシュトラウスのほうは、全体としては死亡率が低い作曲家なんだけど。

公演のチラシ

ともあれ、前日のトスカ終演後、幡ヶ谷のチャイナハウスで食べたスッポンの威力か、割と元気に重量級の一幕を堪能した。本日もまた、天井桟敷、ちょっと出世して3列目。

サロメは1992年にロイヤルオペラハウスで観たマリア・ユーイングの舞台が目に焼き付いている。えっ、ここまでやっちゃうのという感じで、目が点になった私は、この時ばかりは天井桟敷を悔やんだものだった。この公演はビデオにもなっているが、さすがに一糸まとわぬ姿のところはロングに退いている。

若杉さんのアクシデントで指揮台に立った児玉宏さん、なかなかいい。ピットが満杯になったオーケストラから、とても雄弁な音を引き出している。

題名役のジャニス・ベアードは歌唱と声量の素晴らしさに加え、歌っていないときの表情・演技がとてもいい。少女というには少しグラマラスだけど、無邪気さと邪悪さを感じさせる表情だった。

ヴォルフガング・シュミット、小山由美の夫婦も良かった。シュミットは常軌を逸した人物像を強く感じさせる歌い振りで出色、小山さんもワルキューレのときと同様に存在感がある。

レパートリーシステムの試みとなった今回のトスカとサロメの日替わり公演、まずは大成功か。しかし、3演目併走が限度かな。それ以上になると水準を維持するのがちょっと難しくなる。今回は装置を銚子の倉庫まで往復させていたのかなあ。それとも、3幕+1幕だから、何とかバックステージに収納できたのかな。

以下、余談。

タイトルロールのベアードは、先月10日頃に来日、それまでの稽古では、岩井理花さんがアンダーを務めていたそうだ。もし、ベアードにアクシデントがあれば、若杉さんの棒でこの役を歌ったことがある彼女が舞台に立ったのだろう(そのとき行けなかったので、私のマドンナも観たかったなあ)。
 それにしても、公演前にかなり早く来るんだなあという印象だ。新国立劇場の姿勢もその辺はしっかりしている。誰でも名前を知っているスーパースターでなく、実力のある旬の人を連れてきて、きちんと舞台をつくるというアプローチは正解だと思う。

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