新国立劇場「カルメン」~ 行く日を間違ったかな?
2002/6/15

公演のチラシ

決算期の休日出勤の振替を満を持して金曜日に取り、テレビにかじりついていた私は、日韓大フィーバーの余韻醒めやらぬまま、2日振りの外出。細かな雨の中を初台まで20分の徒歩、結局、WCUPが始まってしまうと、早朝突撃のZ券どころではなく、「カルメン」もこの日だけになってしまった。

さて舞台は、何と言うべきか…

昨年の新国立劇場でよく耳にした、主役陣は健闘、ピットは生彩なしというパターンが逆転した演奏、と感じた。
 ジャック・デラコート指揮の東京フィルの推進力のある演奏、藤原歌劇団合唱部・新国立劇場合唱団合同のコーラスの力強さが際だっていた。

あっと驚く前奏曲の快テンポに始まり、ホルンが時々変な音を出す(恒例?)ところはあったけど、全曲通して存在感のあるピットだったと思う。
 コーラスは人数が多すぎて、演出も処理しきれない感じがあったものの、乱れもなくボリューム感が心地よいものだった。

終幕の闘牛場の回り舞台は秀逸、内と外を使い分けた演出は、ありそうなものだが、これを実践した舞台を見るのは初めて。ホセに刺された瀕死のカルメンが、闘牛場の中によろめきながら歩み入り、くるっと回った舞台では、あれだけ大勢いた観客が誰もいない。なかなか、よくできた幕切れだ。
 アンナ・マリア・キウリのカルメン、ウラディミール・ボガチョフのホセも、この終幕の歌唱がこの日一番の出来だった。

オペラ・コミーク版がメジャーハウスのグローバル・スタンダードとなった現在、私の耳にはアルコーア版は贅肉が多すぎる印象がある。タイトル・ロールの役作りにしても同じ、歌唱面でもシャープなカルメン像を知っている私たちには、キウリのカルメンはちょっと時代かがったものに感じられる。冒頭のハバネラからして、それまでの快調なテンポが一気にスローダウン、どうも音符もはみ出し気味のようだし…

ボガチョフは、可もなく不可もなくという感じ。熱演だったが、有名なアリアは今ひとつ、幕切れはなかなか聴かせたけど…
 エスカミーリョのジャンフランコ・モントレゾールはもうちょっと声量がほしい。長身痩躯の伊達男振りはいいにしても…
 出口正子さんのミカエラはミスキャストと言うより、彼女を起用すること自体が誤り、いまの実力本位のキャスティングを怠ると、ファンにそっぽを向かれてしまうだろう。第一幕の二重唱、第三幕のアリア、全く艶のないかすれたような声で、叙情的なメロディが台無し。別キャストの砂川涼子さんを聴きたかった。彼女が歌う「清教徒」日本初演に大阪から駆けつけた頃とは、もはや比ぶべくもない。残念だ。
 脇役陣は女性上位が歴然、男性陣は力みすぎで、アンサンブルのバランスが壊れそうな場面が随所に。

大阪から遠征の友人と一緒に観た。週末、埼玉の「フィデーリオ」とはしごするには、「カルメン」は15日の土曜日しかないという日程上の制約が恨めしいところだ。。

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