大井浩明ピアノリサイタル ~ 業界人風がぞろぞろ
2002/7/1

一週間前の月曜日からスタートした招待券シリーズの3つ目。8日間で4つのコンサートに行って、払ったお金がたった3000円とは、これぞ大阪人の真骨頂か(東京の人は同じことをしても黙っている)。

平野公崇さんのサックスに始まり、大井浩明さんのピアノで終わる。別の見方をすれば、サッポロビールに始まり、アサヒビールで終わる。しかしまあ、今夜のコンサート、企業メセナの無料コンサートにしちゃ、度肝を抜くプログラム、クセナキス生誕80周年記念とか。

公演のチラシ

私も全然聴いたことのない曲ばかりなので、とりあえずプログラムを。
 1 クセナキス「6つのギリシア民謡集」
 2 クセナキス「ヘルマ(胚)記号論的音楽」
 3 陳基綱「京劇の遊びゆくままに」
 4 クセナキス「エヴリアリ」
 5 譚盾「雫・滴・瀝」
 6 クセナキス「ミスツ(霧)」
    (休憩)
 7 細川俊夫「メロディアⅡ」
 8 鷹羽弘晃「H20」
 9 クセナキス「エオンタ」~ピアノと金管五重奏~

頭が痛くなるかなと、ちょっと心配したが、大丈夫。

まさに超絶技巧と言うんだろうか。前の席に座っていた女性がクセナキスの楽譜をずっと見ながら聴いていたので、後ろから覗くと、五線が四段重ね、五段重ねなんて当たり前。ひえーっ。よくまあ、こんなの弾けるもんだ。

5のプログラムの前に、大井さん何をしているのかなと思ったら、譜面台を取り外し、ピアノの中に手を突っ込んで、小さな音を出し始めた。内部奏法と言うんだって、中国琵琶の音を模したとか。

「クセナキスは僕の青春の音楽」なんて言う後輩に連れられてきたので、色々教えてくれる。何しろ、オペラは私が、コンテンポラリーは彼が、という役回り。来年11月には、日生劇場で「ルル」三幕版があるそうだから、これは共通項、二人で行かなくっちゃ…鬼が笑うなあ。

最後の「エオンタ」は、ブラスが加わり、見ていても楽しい。後輩曰く、「クセナキスは楽譜に克明な指示を書き込んでいますから、解釈の余地がないんですよ。この曲をやる時の衣装の指示もあるんじゃないのかなあ。昔聴いた時も同じ格好で演奏していましたよ」

黒シャツ黒ズボン、ブラスは最初は後方で立って演奏していたかと思えば、ピアノの脇に集結、はたまた着席、立ち上がったと思うとそれぞれ別方向に朝顔を向けて吹く、挙げ句の果てはマーチングバンドよろしく、舞台から降りて…。その間ピアノは獅子奮迅の大活躍。でも安定した4拍子のようで、指揮をした鷹羽弘晃さんの手の動きは、音楽の先生みたいだ。

いやあ、招待券(今回は後輩の応募はがき)で聴きに行くというのは、普段は聴かない音楽に触れるいいチャンスだ。この8日間、サキソフォーン協奏曲から、ドン・ジョヴァンニ、三大テノールの「遠くへ行きたい」なんてのもあったぞ。マーラーをはさんで、クセナキスで嵐のようなコンサート通いも一段落。

このアサヒビール・ロビーコンサートは吾妻橋の本社ビルで開催されている(73回目)。ここまで性根の座ったメセナは大したもんだ。いつもは200人ほどの聴衆で、地元の中高齢者が多いらしいが、何度も来ている後輩が言うには、「今日はお客がかなり多いですよ。この手のプログラムで見かけるその筋の人が多いですわ。全然雰囲気違いますよ」

へえっー、そんなものかなあ。プロかアマかは判らないが、確かに(現代音楽)業界風の人が目立つ。おっと、あそこにいるのは、井上道義さんではないか。9月の「ナクソスのアリアドネ」のチケットを手帳にはさんでいたら、サインしてもらえたのになあ。

コンサート会場で見かける井上さん、いつもカッコいい服を着ているなあ。うちの近所で、短パン姿で自転車に乗って犬を散歩させる姿も見かけたけど…

あっ、そうそう、このコンサートは当然ドリンク付(ただし1缶)。

この感想文やら何やら判らない駄文を、アサヒビールにもメールで伝えたら、後日、担当の環境社会貢献部の方から丁寧な長文のお礼状をいただいた。

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