N響オーチャード定期「バンドネオン協奏曲」ほか ~ いったい何が?
2002/7/3

公演のチラシ

ファビオ・ルイージの名前は、最近のヴェルディのレアものオペラ(アロルドとか…これはイケる)のレコーディングで馴染みがあったが、実物を見るのは初めて。指揮者と言うよりも、ウォール・ストリートの投資銀行に勤務していますと言われたら、納得してしまいそうな風貌だ。

しかし、オールドファンなら目を剥きそうな変なプログラムだ。ヴェルディ「ナブッコ」序曲、ピアソラのバンドネオン協奏曲、ブラームスの交響曲第1番。オマケにどういう訳か、二つ目と三つ目が入れ替えになるという椿事。

「ナブッコ」が終わって、ピアノやハープをセッティング、弦楽器・打楽器奏者(この曲は管楽器なし)がそろって、ソリストと指揮者が登場という段になっても、なかなか現れない。ややあって、ステージマネージャーとおぼしき人が登場(おっちょこちょいの聴衆がパラパラと拍手)、コンサートマスターに耳打ちすると、オーケストラメンバーは楽屋に引きあげ。狐につままれたような状態。
 「演奏準備が整うまで、しばらくお待ちください」、次に「演奏曲目の順番を変更します。ここで10分の休憩にいたします」、というようなアナウンス。結局、その休憩なのか何なのかの後、ブラームス、ピアソラと休憩なしに最後まで。私もそうだが、ずっと着席したままの人が多かった。

ブラームスからピアソラというのは、とんでもない組み合わせのように思うけど、不思議に私は違和感がなかった。

交響曲第1番の出だしから、「あっ」という感じ、それがついに最後まで。こんなブラームス聴いたことない。柔らかで軽やかなブラームス、まるで第2番の交響曲みたい。刺激的なアタックは一切なし、重厚な響きを重ねようという気持ちも一切なし、主旋律を常にくっきりと美しく。こんな演奏もあるんだと驚くことしきり。私は全然ネガティブじゃないけど、最後の和音の後にはブーイングが飛ぶのではないかとさえ思った(それは、なかったが)。

N響というのは大したオーケストラだ。こんなに指揮者の意図に敏感に反応し、きっちり音にしてしまうのだから。

演奏の間、この演奏はオーチャードホールの狭くて蒸し暑い最上階の席で聴きたくないなあという気持ちになる。広々とした緑の中で寝そべって、カンパリソーダでも飲みながら聴きたいなあ。そんな爽やかなブラームスだった。
 ピアソラは同じ場所で聴くにしても、夜の帳が降りた後の音楽かなあ。お酒のイメージはフルボディの赤ワインがあいそう。こちらも、リラックスして楽しみたいなあ。ナマのバンドネオンも初めて聴いたが、小松亮太さん、よくあんなボタンだらけの不自由そうな楽器が弾けること。

最初のナブッコ、これもなかなかの演奏だった。折り目正しい演奏をする人だなあと思う。ゆったりとしたテンポで、一点一画がきちんとした楷書風。響きがとてもクリアなのは、N響の合奏能力の高さなのか、チューニングがしっかりしているからか。このあと、幕が上がれば最高なのになあ、なんて。
 準メルクルが新国立劇場のピットにN響を入れたかったのも、残念ながらよく判る(大野/東フィルの十数年来のファンの私だけど)。

色々とあった今夜のコンサート、管楽器奏者は予想外の早帰りでご満悦ではなかったかな。一方で、ホワイエのバーは、売上げ激減ではなかったかしら。
 なぜか、大阪のシンフォニーホール名物、終演後のパン大安売りを思い出した(売れ残り?の美味しいパンを多数袋詰め500円でホワイエで売る、ドレスアップしたご婦人が先を争って買う…私もおばさま方の争奪戦に加わる…大阪やのう)。さすがに東京ではそんなことは見かけないけど。

ところで、小松さん、本当は何があったんだろう。某狂言師のように遅刻ということでもないだろうし、楽器が壊れたので急遽修理というふうに、想像しているんだが…
 しかし、いつも、聴いた音楽以外のコメントが多いなあ。反省。でも、これが私流のコンサートを120~150%楽しむ方法なので、ご容赦。

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