新日本フィル定期「ナクソス島のアリアドネ」 ~ ツェルビネッタ雑感
2002/9/12

体はひとつなのに、同じ日のチケットが何故か4枚、トリフォニーホールと新国立劇場、友だちの分も含め2枚ずつ。前者は定期の通し券、後者は会員前売り初日に購入したもの。ところが、私は仕事でバタバタ、友だちも都合が悪くなって…

そこで、困ったときの掲示板頼み、アンドレア・ロストの「椿姫」は、書き込んだ2分後、まさに瞬間蒸発。しかし、どうした井上道義&NJP。友だちの分は5000円のS席だけど、私のは2000円のC席なのに…。3日たっても、ただの一通のメールもない。あれれ。
 こうなりゃ遅刻覚悟で錦糸町へ。閉鎖されていた「そごう」がショッピングビルとなって再開されて以来初めてかな。後半「オペラ」からの鑑賞となる。

さすがに先週までの疲れ、インヴァ・ムーラのヴィオレッタでは、それを吹き飛ばすパワーをもらったが、このナクソスはそこまで行かない。プロローグの上演中、誰もいないバーで飲んだワインのせいか、ツェルビネッタ登場までは夢うつつ状態。
 このオペラ、ツェルビネッタを聴くようなものだし、だから遅刻しても足を運ぼうと思ったわけだ。
 天羽明恵、悪くない。と言うよりも、チャーミングな演技だし歌だ。目まぐるしく展開する曲想の、決めるところは決めるし…。でも、私は満足したとは言えないなあ。

1994年、若杉弘・都響がサントリーホールの定期で「町人貴族」とのセット版で採り上げたとき、ほとんど同じプロダクション(歌手も)を大阪センチュリー交響楽団で「ウィーン音楽祭 in Osaka'99~二人のシュトラウス」のプログラムの一つとして再演したとき(いずみホール)、両方とも聴いている。
 そのときのツェルビネッタは、釜洞祐子。歌・声・テクニックはもちろんだが、私が釜洞ファンなのは、彼女のピュアで明晰な言葉。自分はドイツ語が判るわけじゃないけど、そんなに外れた見方でもないと思う。

もうひとりのツェルビネッタは、やはりグルベローヴァ。この役はリサイタルでしか聴いてないが、鋭利な刃物を思わせる全てのフレーズのキレの良さ、完璧というものがあるとすれば、これ。
 あまり比較しちゃいけないとは思うし、充分に魅力的な天羽ツェルビネッタだが、先の二人の印象が強すぎて…
 初めてこの作品の舞台を観たのはメット(メット自体も初めて)。ワクワクだった割には、そのときのキャスリーン・バトルは全然記憶に残っていないというのに。

天羽ツェルビネッタ、フレーズの途中(最初と最後はいいとして)の言葉のシャープさが、もう少し欲しいなあと思った。
 なにしろ後半だけの鑑賞なので、通しで観たら別の印象もあったと思うし、自分の体調も優れなかったという点もあると思う。その歌だけを聴きに行くというのも、オペラの楽しみ方としては、偏っているようにも思うし。

あっ、そうそう。最後に登場するバッカス。舞台裏からの素晴らしい声に、今回の公演にヘルデンテノールを誰か呼んでいたっけと思ったら、登場したのは永田峰雄。ドイツで活躍中のようで、この人には驚いた。これから、ワーグナーの諸役で登場する機会が増えると思う。

もうひとつ気になるのは、このトリフォニーの音響、PAを使ったのかも知れないが、インストルメンタルはともかく、ヴォーカルは響きすぎてあまり良くない(サントリーホールもそうだが)。

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